2023 年 65 巻 4 号 p. 137-148
歯科矯正治療は,炎症のない歯周組織に対して行うべき治療である。しかし歯周病に罹患しているにもかかわらず,矯正治療が実施され治療後に著しい歯肉退縮や骨吸収が認められる症例が散見される。本症例は,他院で矯正治療中に歯周病の急性発作を繰り返した広汎型侵襲性歯周炎患者に対し矯正治療を中断し,歯周組織再生療法を含めた歯周治療を行った症例について報告する。本症例から広汎型侵襲性歯周炎に対する矯正治療は,炎症による歯周組織破壊を早期に停止させ炎症のない歯周組織に改善し行うことが重要なことが示唆された。