1986 年 28 巻 1 号 p. 186-202
近年, 遊離歯肉移植手術の必要性が高まり, 数多く行われるようになった。著者らは付着歯肉の幅を拡張する目的で行う歯肉歯槽粘膜外科手術にLyoduraを有効に応用することを考慮し, 雑犬の歯肉に応用した。Lyoduraがコラーゲン線維の豊富な結合組織に置換される過程を観察し, その治癒過程について組織学的に遊離歯肉移植術と比較した結果, 線維芽細胞, あるいはコラーゲン線維を伴った線維芽細胞が, 術後14日までに結合組織からLyodura内部に向かって, Lyodura本来のコラーゲン線維を分解しながら, 増殖, 遊走しているのが観察された。Lyodura使用時の最終的な治癒状態は, 遊離歯肉移植の場合と差異は無い。遊離歯肉移植部位のコラーゲン線維は過形成され, 最終的に治癒した移植部の形態は上皮が盛り上がった状態を呈したが, Lyodura部位はそれと比較すると移行的な形態を示した。