抄録
軽度から中等度の歯周炎罹患者に対する初期治療がもたらす咬合音の変化について検討を行った。臨床パラメータには歯肉炎指数・歯周ポケットの深さ・歯の動揺度を, 咬合音の分析には咬合音持続時間と咬合音波形形態を採用した。初診時診査, プラークコントロールの後, 全顎にわたるスケーリング・ルートプレーニングを行い, 術後1週, 1ヵ月, 3ヵ月の時点で再び初診時と同様の診査を行った。その結果: 1) 咬合音持続時間は, 歯周組織の炎症の改善とあいまって減少し, 初診時と術後の各時期の間には統計学的有意差が認められた。2) 動揺歯を有する軽度から中等度の歯周炎罹患者で, 咬合性因子に特に問題がない場合, その咬合音持続時間は初診時で平均13.4 msecと健常者の6.9 msecより大きいが, 術後には8.3~8.9 msecに減少し健常者の値に近づくことが認められた。