抄録
遊離歯肉移植術の受給側における骨膜の有無が, その治癒起点においてどのような影響を及ぼすかを検索するために, 21頭の成犬を用い, その付着歯肉部に受給側として, 骨膜床と裸出骨床を隣接して設け, これに自家遊離歯肉の移植を行い, 術後の変化について, 病理組織学ならびに臨床的比較検討を行った。その結果, 臨床的には術後2週日まで移植片周辺部に発赤および腫脹がみられた。また, 骨膜床と裸出骨床との比較においては, 裸出骨床の方がやや収縮傾向が大きかった。一方, 病理組織学的には, 術後2週日までは骨膜床側に比べ裸出骨床に炎症傾向が強いほかはとくに大きな相違はなかったが, 術後3週目になると, 歯槽骨の吸収程度に明らかな相違がみられ, 骨膜床側に比べ裸出骨床側歯槽骨表面の吸収が顕著にみられた。しかし, 術後3ヵ月目においては組織像に相違はなく, どちらも治癒していた。