日本歯周病学会会誌
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リン酸カルシウム系セラミックの歯周治療への応用
8. Hydroxyapatite周囲骨への矯正力の影響
原 宜興村上 照男梶山 啓次郎前田 勝正赤峰 昭文長嶺 尚子宮武 祥子安部 達也畔元 良仁青野 正男
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1989 年 31 巻 1 号 p. 224-234

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抄録
ハイドロキシアパタイト (HAP) を骨移植材として使用した後に, 歯牙の小矯正移動を行うことの可否を判断するため, ビーグル犬に作製した人工的骨欠損内にHAPを移植し, 骨の再生が起こった時期に当該歯牙に矯正力を加えた。その結果, まず肉眼的には移植例のほうが日牙の移動量は少なかった。次に組織学的にみると, 圧迫側ではHAP周囲に再生した骨組織にも, 対照例同様の破骨細胞性の骨吸収が観察された。それとともに, HAPと接した歯根に吸収が起こっていた。またHAPには, 多核の巨細胞が付着し吸収を行っているようであった。矯正移動後の保定期間には, 歯根周囲に残存したHAPを伝わって伸びる骨組織により, 歯根の骨性癒着が生じていた。一方牽引側では対照例と同様に, HAP周囲に再生した歯槽骨にも骨組織の添加がみられた。さらに対照例では, 骨欠損の内部は結合組織で満たされ, 骨組織による修復が不充分であったのに対し, 移植例ではかなりの骨修復が認められた。これより, HAP周囲に再生した骨組織にも, 正常骨組織同様の破骨細胞による骨吸収が起こると考えられた。そして臨床的には, 歯牙の小矯正移動を行う予定の歯牙に対して, 牽引側にHAPを移植することは効果的であるが, 圧迫側への移植は, 歯根の吸収や骨性癒着を引き起こす可能性があるので, 避けるべきであると判断された。
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