日本歯周病学会会誌
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31 巻, 1 号
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  • Department of Periodontology, Niigata University School of Dentistry
    堀野 一人, 佐藤 圭一, 吉江 弘正, 原 耕二
    1989 年 31 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究はいわゆる歯周病原性細菌であるところのBaoteroides gingivalis (B2) およびActinobacillus actino . myoetemcomitans (Aa) に対する調整ウサギ抗体と成人性歯周炎患者の血清を用いて, この両菌に対する防御作用を検索した。
    In vitroにおける検索結果から補体媒介性殺菌能は抗Bg抗体, 抗Aa抗体ともにコントロールあるいはsham抗体と比較してほとんど有意差は認められなかった。また好中球を抗体や補体に添加した際にもその殺菌能の有意な亢進は認められなかった。しかしながら, インキュベーション後の上清はコントロールに比較してBg CFUおよびAa CFUを有意に減少させた。このことは抗Bg, 抗Aa抗体はBg, Aaを殺菌せずにこれら細菌の凝集を促進させる作用あるいは好中球の食菌能を亢進させる作用を有することを示唆している。
    次にイヌの実験的歯周ポケット内のAaにおける抗Aa抗体の作用を検索したが, 抗Aa抗体のAaに対する殺菌的あるいは制菌的作用, もしくは好中球のポケット内への滲出を促進する作用は認められなかった。
    以上, 本実験の結果から抗Bg, 抗Aa抗体はBgおよびAaに対して特異的な反応を示すまでに至らなかった。
  • 中川 種昭
    1989 年 31 巻 1 号 p. 13-28
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    成人性歯周炎患者の病態把握と, 初期治療として行われるプラークコントロール (PC), スケーリング・ルートプレーニングの効果を細菌学的・ 免疫学的に評価する目的で, 局所の黒色色素産生性Bactenroidesを中心としたグラム陰性桿菌ならびにそれらの細菌に対する血清IgG抗体価を酵素免疫測定法にて経時的に検索した。
    歯周炎患者の局所からはBacteroides gingivalisを中心として黒色色素産生性Bacteroidesが高率に分離された。 また, B. gingivalisの局所での存在と本菌に対する血清IgG抗体価の上昇は統計学的に有意な関連性があった。 各治療段階で, 臨床症状は改善し, PC後には菌数の減少が, スケーリング後には細菌叢の変動が見られたが, 深い歯周ポケットからの歯周疾患関連細菌の排除は初期治療のみでは困難であった。 初期治療後のB. gingivalisの存在と臨床症状が関連することなどから, 初期治療を細菌学的, 免疫学的に評価し得ることが示唆された。
  • 清田 築
    1989 年 31 巻 1 号 p. 29-42
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周炎患者の歯齦縁下プラーク中のグラム陰性細菌を螢光抗体法を用いて検索し, 初期治療による歯周ポケット内細菌叢の変化を検討した。健常者5名 (10部位; H群) と患者23名 (44部位; P群) からの試料中のB. 本論文の要旨は, 第29回秋季日本歯周病学会総会 (1986年11月20日), 第31回春季日本歯周病学会総会 (1988年4月14日) において発表した。30 1989年3月gingivalis, B. intermedius, A. actinomycetemcomitans, F. nucleatum, E. corrodens, T. denticola, B. forsythus, W. rectaを検索した。被験部位のB. gingivalis, T. denticola, B. forsythus, W. rectaの有無がその部位のGI, PlI, BIに関連しており, 試料中に占めるB. gingivalis, T. denticolaの割合はその部位でのPDに相関していた。歯齦縁上のPlaque controlだけではT. denticolaの減少のみが有意で, scaling, root planing後では, B. gingivalis, T. denticola, E. corrodens, B. fbrsythusの減少が有意であった。BIの改善部位と非改善部位間には, B. gingivalis, T. denticola, B. forsythus, W. rectaの割合に, PDでは, T. denticolaの割合に差がみられた。これらから初期治療効果の判定に螢光抗体法による局所のB. gingivalis, T. denticola, B. forsythusをモニターする有効性が示唆された。
  • 合成基質による活性の測定
    宮澤 康
    1989 年 31 巻 1 号 p. 43-54
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周疾患の細菌学的診断に応用するために, 歯周病関連菌群に特有な歯周ポケット内ペプチダーゼの活性を4種の合成基質を用いて測定し, 臨床所見, 歯肉縁下プラーク中のこれら細菌群の菌数との相関を調べた。使用した合成基質は基質1 (α-N-benzoyl-DL-arginine-β-naphthylamide, BANA), 基質2 (N-carbobenzoxy-glycylglycylarginine-4-methoxy-β-naphthylamide), 基質3 (α-N-benzoyl-L-arginylglycyl-L-phenylalanyl-L-proline-4-methoxy-βnaphthylamide), 基質4 (N-carbobenzoxy-prolyl-L-alanylglycyl-L-proline-4-methoxy-βnaphthy-lamide) である。その結果, 基質1, 2, 3に対するペプチダーゼ活性とSpirochetes数に, また基質3に対する活性と黒色色素産生性Bactmides数との間に高い相関がみられた。臨床所見, 特にProbing Pocket Depthとの相関も同様であり, 診断の目的には基質3が最も優れていると思われた。
  • 歯根膜の有無が歯の移植に及ぼす影響
    大阿久 国賢
    1989 年 31 巻 1 号 p. 55-71
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周組織の再生における歯根膜の役割を追究する目的で, 歯根膜の有無が歯の移植に及ぼす影響に関する実験病理学的研究を行なった。11頭のビーグル犬 (3果歳~6果歳) の上顎の第1前臼歯部と下顎の第2, 第3, 第4前臼歯部を実験部位とし, 右側では顎骨内に人工的に作成した骨窩洞に歯根膜の付着している左側の新鮮歯を移植し, 左側では抜歯窩に先に抜去しておいた歯根膜のない右側の保存歯を移植し, 6ヵ月の実験期間で, 肉眼的, X線的ならびに組織学的観察を行なった。その結果, 肉眼的には左右側とも良好な治癒が観察されたが, 組織学的には, 左側では骨性癒着と歯根吸収が一貫して観察され, 右側では一部で観察された骨性癒着と歯根吸収を除いて, 全体的には, 歯肉, 歯槽骨, セメント質, 歯根膜の4者から成る歯周組織複合体の完全な再生が観察された。以上の結果から, 歯根膜が歯周組織再生に大きな役割を演じていることが強く示唆された。
  • 犬井 清孝
    1989 年 31 巻 1 号 p. 72-82
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    人工骨移植材周囲に出現する多核巨細胞の性質を同定するために, 組織化学的検索を行なった。ラットおよびマウスの皮下に骨移植材として吸収性β-tricalcium phosphate, 非吸収性多孔性および充実性hydroxyapatiteを移植し, コントロールとして失活骨顆粒および外科用縫合糸を使用した。その結果, 人工骨移植材および失活骨顆粒周囲に出現する多核巨細胞には, ともにacid phosphataseおよびtartrate resistant acid phosphatase活性は陽性所見を呈した。縫合糸の周囲に出現する多核巨細胞は陰性であった。non specific esterase陽性細胞数は, 縫合糸を除いてどの移植材でも低い値を示した。
    以上のことより移植材周囲に出現する多核巨細胞の一部は, 破骨細胞と同様な酵素活性を示し, 人工骨移植材は破骨細胞により吸収される可能性をもつことが示唆された。
  • 八重柏 隆
    1989 年 31 巻 1 号 p. 83-99
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ハイドロキシアパタイト (HAP) の分岐部病変の修復に与える効果を検索するために, ビーグル犬の前臼歯部に分岐部病変 (3, 4級) と分岐部骨欠損 (骨削除) を作成し, HAP顆粒を充填後, 6ヵ月までの治癒経過について肉眼的, X線的, 組織学的に観察した。
    病変部では, 分岐部形態に多少の盛り上がりは見られたが, 陥凹した歯肉形態の回復は得られなかった。また, 経時的に顆粒と骨との癒着や, 顆粒表層の骨様組織の形成が生じており, 6ヵ月では分岐部歯槽頂は充填前よりも歯冠側に位置するようになった。
    骨削除部では, 分岐部は骨と顆粒の混在する硬組織で埋められており, 歯根と歯槽骨の直接, あるいはHAPを介しての癒着がみられた。また各充填部とも骨と離れた部位の顆粒は密な線維によってそのまま囲まれていた。
    HAPは本来骨組織が形成される場で, 形成される硬組織量を骨とHAPの混在する組織によって量的に増加させる役割を演じていた。
  • 丹田 博巳
    1989 年 31 巻 1 号 p. 100-118
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯肉剥離掻爬術によって切除された内縁上皮下と結合組織性付着部の各々の血管網の再構築過程について, 雑種成犬の上顎前歯を用い血管の樹脂注入鋳型標本を主体に走査電顕で検索した。その結果, 創傷初期において歯肉辺縁部の上皮下毛細血管は主にelongation typeの血管新生過程を経て血管球に変化していた。歯肉固有層の接着層では主にsprouting typeの血管新生過程を経て新生洞様血管を形成し, これを介して歯肉弁と歯根膜の血管網が吻合していた。このうち歯肉辺縁部の血管球と接着層の歯冠側部分の新生洞様血管は上皮の再生に伴い網目状の内縁上皮下毛細血管網に変化した。接着層の根尖側部分の新生洞様血管は, 同部の器質化, 結合組織性付着に伴う組織環境の変化に対応して一連の形態変化を示したが, 確立された血管構築は対照側と比較して不規則で密な形態を示し, 治癒によつて獲得された付着機構が本来のものとは異なることが示唆された。
  • とくに根管内イオン導入法による各種薬剤の歯根表面への移動について
    佐藤 正俊
    1989 年 31 巻 1 号 p. 119-128
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    イオン導入法によって, 根管内の薬剤が歯根周囲に移動する現象を応用し, 根管を利用した歯周治療におけるLocal drug delivery systemとしての新しい方法の開発を意図した。実験は, 抜去歯を寒天に植立した後, 根管に薬剤 (ヨードヨード亜鉛, ペニシリンG. K., 塩酸ミノサイクリン) を注入し, イオン導入を行なった後合, 歯根周囲の寒天への薬剤の移動量を検索した。
    その結果, 供試した薬剤の移動量は, いずれも歯頸部1/3において最も大きく, 次いで根中央部1/3, 根尖部1/3の順であり, またルートプレーニングおよびクイックジェットで根面を処理するなどセメント質が欠如した場合, 薬剤の歯根周囲への移動量が大きく, その際の根面には象牙細管の露出が認められた。
  • 米良 豊常
    1989 年 31 巻 1 号 p. 129-146
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周炎罹患部位の骨変化を捉える手法としてのディジタルサブトラクション法の有効性について検討を行なった。さらに, この手法による定量的評価についても検討した。骨ファントームと豚大腿骨骨片による予備実験の結果, 定量的評価により骨塩量の変動を高い精度で捉えうる可能性が示された。さらに, 猿の歯周治療後の歯槽骨変化を硬組織ラベリング法により評価を行ない, この結果とサブトラクション像上の変化とを比較検討した。その結果, サブトラクション像上に描出された変化は, 実際の組織学的所見と良く一致していた。また, サブトラクション像による定量的評価結果は組織学的計測により求めた骨変化量と高い相関を示した。以上の結果より, ディジタルサブトラクション法は, 歯周炎罹患部位の骨変化を捉えるための有効な手法であり, また, 定量的評価により骨変化の定量化も可能であることが示唆された。
  • 荒井 法行, 音琴 淳一, 伊藤 公一, 村井 正大
    1989 年 31 巻 1 号 p. 147-155
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    機械的ならびに化学的処理を施した露出歯根象牙質面に対する細菌侵入に関してin vitroにおいて検討を行った。健全な象牙質面を#240サンドペーパーで調整した試片 (RP面) およびこれらをクエン酸 (pH1. 0, 3分間) で処理した試片 (CA面) をS. mutansS. sanguisを別々に培養液中で1日, 3日, 7日, および28日培養し, 表面から象牙細管への細菌侵入に関して組織学的に観察を行い, 以下の結論を得た。1. RP面, CA面ともに初期から細菌侵入が認められたが, 培養日数の経過とともに細菌侵入距離および細菌侵入細管数はRP面においては増加は認められず, CA面において有意な増加を認めた。2. RP面とCA面とを比較するとCA面の方が両菌種ともに細菌侵入距離が大きく, 細菌侵入細管数が多かった。3. クエン酸処理により露出歯根象牙質面から深部へ細菌が侵入しやすい環境になることから, プラークコントロールが不良であると為害性をおよぼすことが示唆された。
  • ELISA法を用いた検討
    市村 光, 佐藤 巌雄, 下島 孝裕, 保母 清彦, 金井 章, 池田 克已
    1989 年 31 巻 1 号 p. 156-165
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周疾患における炎症局所でのマクロファージ (Mφ) の動態を知るため, ラット腹腔常在Mφ による可溶性免疫複合体を用いた酵素免疫定量法で, Mφ の貪食活性について検討した結果, 菌構築成分であるlipopolysaccharide (LPS) およびmuramyldipeptide (MDP) により有意な貪食活性の増強を認め, またBacteroides gingivalis超音波破壊上清, Capnocytophaga sputigenaさらにFnsobaoterium nucleatumの上清がMφ の貪食活性に影響をおよぼすことがわかった。
    上記の結果から, Mφ の貪食能はグラム陰性菌の細胞表層成分の一つである内毒素性リボ多糖体LPS, および菌体細胞壁ペプチドグリカンの要構造であるMDPにより影響に受けることが確認された。また菌体上清を用いた系の実験結果から菌種間によるMφ の食食能への影響の違いが示唆された。
  • 歯根膜由来線維芽細胞の代謝に及ぼす性ホルモンの影響
    難波 秀樹, 野村 慶雄, 木下 正彦, 清水 秀樹, 小野 耕資, 後藤 弘幸, 新井 英雄, 滝川 雅之, 村山 洋二
    1989 年 31 巻 1 号 p. 166-175
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究では, ヒト歯根膜由来線維芽細胞の代謝に及ぼす性ホルモンの影響を, 種々の細胞機能の面から検討した。
    歯根膜由来線維芽細胞および歯肉由来線維芽細胞は, 健康な歯周組織を持つ7人から分離・ 調製した。性ホルモンは, 17β - エストラジオールおよびプロゲステロンを用い, 線維芽細胞機能に及ぼすホルモンの作用を調べ以下の結果を得た。
    1. 歯根膜由来線維芽細胞は, 形態的およびアルカリフオスファターゼ活性から, 骨誘導性細胞に類似した特性を示した。
    2. 歯根膜由来線維芽細胞のDNA合成は, 17β-エストラジオールおよびプロゲステロンにより5%の血清存在下で上昇した。
    3. 歯根膜由来線維芽細胞のコラーゲン合成は, 両性ホルモンにより低下した。非コラーゲン性タンパク合成は, エストラジオールおよび低濃度のプロゲステロンにより低下した。
    4. 歯根膜由来線維芽細胞の代謝機能発現には, 培養系に血清の添加が必要である。以上より, 性ホルモンは, 歯根膜由来線維芽細胞の代謝と深く関わっていることを結論した。
  • 線維芽細胞の初期付着について
    藤井 健男, 岩井 宏之, 小鷲 悠典, 松尾 朗, 矢嶋 俊彦, 加藤 ヒロシ
    1989 年 31 巻 1 号 p. 176-183
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周治療による根面処置が, 線維芽細胞の処置根面へその結果。
    1) 線維芽細胞の初期付着形態は, スケーリングでは短紡錘形のものが大半であるのに対し, ルートブレーニングでは非罹患根面と同様によく伸長していた。更にクエン酸処理を施すと, より薄く偏平に伸長する傾向が認められた。2) 初期付着細胞数は, スヶーリング群72±8個/mm2, スケーリング+クエン酸処理群74±13個/mm2に比較して, ルートプレーニング群110±18個/mm2, ルートプレーニング+クエン酸処理群107±15個/mm2, 非罹患根面群127±5個/mm2は有意に高い値を示した。3) スケーリング, ルートプレーニングにクエン酸処理を施した場合, 初期付着細胞数の有意な増加は認めなかった。従って, 処置根面への線維芽細胞の初期付着にはルートプレーニングが有効で, クエン酸処理は細胞の初期付着形態に付加的効果があることが示唆された。
  • 田口 智, 和田 隆史, 鬼島 茂, 吉江 弘正, 原 耕二, 外村 学, 辻田 敏
    1989 年 31 巻 1 号 p. 184-199
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, サルの実験的歯肉炎における歯肉血液循環動態, 及びニコチン酸エチルエステル, クロルヘキシジンの局所塗布による薬剤効果を検討する事である。
    実験にはカニクイザル2頭を用い, 検査項目としては細菌数 (CFU), 歯肉炎指数 (GI), プロービングデプス (Pd), 付着喪失量 (LA), 歯肉溝滲出液量 (GCF), さらに血液循環動態の指標として, 血液量, ヘモグロビン量, 酸素ヘモグロビン比を加えた。塗布薬剤は, 基剤, 0. 5%クロルヘキシジン + 基剤, 1%ニコチン酸エチルエステル + 基剤, 及び0. 5%クロルヘキシジンと1%ニコチン酸エステルの合剤+基剤であった。実験部位は上下顎臼歯部とし健康歯肉をベースライン (0週目) とし, デンタルフロスで歯頸部結紮し炎症を惹起させ, その2週後とさらにそれ以後2週間, 上記薬剤の塗布を続けた3時期に上記パラメーターにて診査した。屠殺時に歯肉バイオプシーを採取し病理組織学的観察に供した。
    その結果, 炎症惹起後では, GI, GCF, CFU, 血流量, ヘモグロビン量ともに増加し各変化量の間に正の相関が見られた。しかし, 酸素ヘモグロビン比だけは他のパラメーターと相関性を示さなかった。薬剤塗布後, CFU, GCF, 血流量, ヘモグロビン量は基剤と比較して, 改善する傾向がみられた。
  • 骨移植材へのコラーゲンコーティングの-効果 (In vitro)
    辰巳 順一, 栗原 徳善, 金井 章, 高橋 常男, 池田 克巳
    1989 年 31 巻 1 号 p. 200-212
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    骨移植材移植後, 可及的に術後早期の骨移植材の流出防止や積極的な骨移植材の維持安定を図る上で, 各種骨移植材にコラーゲンをコーティングすることにより, その親和性ならびに初期石灰化についてどの様な結果をもたらすかを, 骨芽細胞様細胞を用いたin vitroの系を用いて検討した。実験材料は骨移植材として緻密性ハイドロキシアパタイト, 三リン酸カルシウムおよび牛除タンパク焼成骨を用い, これらに牛真皮由来ペプシン可溶化精製アテロコラーゲンを減圧含浸し紫外線照射による架橋処理を施した。そしてこれら移植材を, 骨芽細胞様細胞と共に10mMβ-glycerophosphate, 10% fetal bovine serumを含むα-MEM培地を用いて37℃ 5%CO2下で培養し, 14日および21日経過後試料を固定し, 石灰化の指標となるAlizarin Red S染色ならびにVon Kossa染色を施し, 光顕的に観察した。その結果, コラーゲンをコーティングすることにより, 14日目には移植材周囲に陽性部位が出現し, 対照に較べて明らかに初期親和性の向上が認められ, 移植材にコラーゲンをコーティングすることは骨芽細胞様細胞に対し, より良好な親和性ならびに初期石灰化をもたらすことが示唆された。
  • 第一報メカノケミカル法で合成したβ-TCPの諸性質とその生物学的安全性について
    横山 信之, 三辺 正人, 菅谷 彰, 堀 俊雄, 大滝 晃一, 長谷川 明, 入江 洋之, 袴塚 康治
    1989 年 31 巻 1 号 p. 213-223
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周治療における骨補填材として用いられるβ-TCPを, メカノケミカル法により合成し, その物理的, 化学的性質を調べ, 生物学的安全性及び埋入試験を行った。合成したβ-TcPはca/P比が1.50, 密度3.709/cm3, また粉末X線回折パターンは, β-TCP単一相を示しており, 高純度なものであった。このβ-TCPを用いて緻密質及び多孔質顆粒を作製したところ, 緻密質において, 焼結温度が1, 100℃ では細孔はあまりないが, 1, 050℃ では多数観察された。多孔質においても焼結温度が低いほど細孔が増えた。これらの顆粒の純水に対する溶解性は多孔質で焼結温度が低い試料ほど大きかった。生物学的安全性に関しては, 細胞毒性試験, 溶血性試験, 急性毒性試験, 発熱性物質試験, 皮膚感作試験, エームス試験, 溶出物試験を行ったが, 全て異常がなかった。家兎への埋入試験でも良好な親和性と骨癒着が認められた。以上の結果, 今後, 臨床応用に期待がもてると考えられる。
  • 8. Hydroxyapatite周囲骨への矯正力の影響
    原 宜興, 村上 照男, 梶山 啓次郎, 前田 勝正, 赤峰 昭文, 長嶺 尚子, 宮武 祥子, 安部 達也, 畔元 良仁, 青野 正男
    1989 年 31 巻 1 号 p. 224-234
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    ハイドロキシアパタイト (HAP) を骨移植材として使用した後に, 歯牙の小矯正移動を行うことの可否を判断するため, ビーグル犬に作製した人工的骨欠損内にHAPを移植し, 骨の再生が起こった時期に当該歯牙に矯正力を加えた。その結果, まず肉眼的には移植例のほうが日牙の移動量は少なかった。次に組織学的にみると, 圧迫側ではHAP周囲に再生した骨組織にも, 対照例同様の破骨細胞性の骨吸収が観察された。それとともに, HAPと接した歯根に吸収が起こっていた。またHAPには, 多核の巨細胞が付着し吸収を行っているようであった。矯正移動後の保定期間には, 歯根周囲に残存したHAPを伝わって伸びる骨組織により, 歯根の骨性癒着が生じていた。一方牽引側では対照例と同様に, HAP周囲に再生した歯槽骨にも骨組織の添加がみられた。さらに対照例では, 骨欠損の内部は結合組織で満たされ, 骨組織による修復が不充分であったのに対し, 移植例ではかなりの骨修復が認められた。これより, HAP周囲に再生した骨組織にも, 正常骨組織同様の破骨細胞による骨吸収が起こると考えられた。そして臨床的には, 歯牙の小矯正移動を行う予定の歯牙に対して, 牽引側にHAPを移植することは効果的であるが, 圧迫側への移植は, 歯根の吸収や骨性癒着を引き起こす可能性があるので, 避けるべきであると判断された。
  • 第一報診査方法の規格化について
    大嶋 清秀
    1989 年 31 巻 1 号 p. 235-240
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    近年, Bモード法表示による超音波診断装置を用いた歯周組織の診査が行なわれており, その有用性が確かめられている。しかし, 超音波断層法には, 診査部位を厳密に確定できないという欠点があった。
    そこで, 歯周ポケットにポケット探針を挿入したときの超音波断層像には多重反射によるエコーが現われ, これが, 超音波断層法における基準点となるのではないかと考え, これについて検索した。さらに, ブタ下顎を用いて, ノギスによる実測値と超音波断層法による測定値との比較を行なった。
    その結果, 超音波ビームとポケット探針の位置関係について1) 水平的位置変化に関しては0.7mm以上で, 2) 水平的角度変化に関しては5度以上で, 3) 垂直的角度変化に関しては25度以上で画像から多重反射によるエコーは消失した。ブタを用いた実験の結果, 超音波断層法による測定値と歯肉剥離後のノギスによる実測値との差は, 0.21 mm以下であった。
    以上ことから, 超音波診断装置による歯周組織診査において, 歯肉溝および歯周ポケットに挿入したポケット探針によって診査部位を規格できることが示された。
  • PHメーターの検討およびその測定値と臨床所見, 細菌叢との関係
    藤川 謙次, 沼崎 光, 小林 雅実, 菅野 直之, 戸村 真一, 村井 正大
    1989 年 31 巻 1 号 p. 241-248
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周ポケット滲出液中のpHを直接口腔内で測定するために考案したキャピラリー付きpHメーターを用いpH値の正確性および再現性を評価し, この装置を用いて軽度から重度歯周疾患に罹患している合計34名の患者の滲出液中のpRの測定を行った。さらに被験部位の細菌叢を位相差顕微鏡で観察し, 形態学的に分類された各種細菌の構成比率を求め, 滲出液中のpHおよび各臨床所見との関連を検討した。その結果, 考案したキャピラリーを使用して滲出液中のpHを直接測定した値は, 測定誤差が小さく臨床応用が可能な装置であることがわかった。歯周ポケットの深さの増大や歯周組織の炎症の増悪に伴い滲出液中のpHは低下する傾向が認められた。細菌学的検討では球状菌の構成比率と滲出液中のpHとは統計学的に有意な正の相関を認め, 運動性菌の構成比率とは逆に負の相関, すなわち歯周疾患の原因菌と報告されている運動性菌の増加にともない, 滲出液のpHは酸性に傾く傾向が認められた。
  • 森田 健司, 恵比須 繁之, 戸田 比佐志, 島袋 善夫, 岡田 宏, 後藤 弘幸, 西村 英紀, 中村 哲也, 柴田 正悟, 野村 慶雄, ...
    1989 年 31 巻 1 号 p. 249-255
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    人工骨補填材として, 顆粒状の多孔質ハイドロキシアパタイトを, 歯周炎患者の垂直性骨欠損35部位に応用し, その臨床成績を評価した。
    初期治療終了後, 歯肉剥離掻爬術を行い, ハイドロキシアパタイトを充填した。術前および術後1週, 2週, 1ヵ月, 3ヵ月, 6ヵ月に診査を行い, ポケット深さ, アタッチメントレベル, 歯肉退縮, 歯の動揺度, プラーク指数, 歯肉の炎症指数, 規格X線写真による骨欠損の深さとハイドロキシアパタイトの残存率を測定した, 術前と術後6カ月を比較した結果, 有意なポケット深さの減少ならびにアタッチメントレベルの獲得がみられた。歯肉退縮は軽度であった。また6ヵ月後のハイドロキシアパタイトの残存率は73±22%であった, 本研究では骨欠損形態のタイプが違っても, アタッチメントレベルの獲得に関して有意差はみられなかった。
  • 歯科的処置の非併用系での臨床的検討
    高森 晃, 山上 紘志, 尾崎 雅征, 山中 弘之, 梅本 産太, 坂本 忠幸, 杉中 秀壽, 岡田 宏
    1989 年 31 巻 1 号 p. 256-265
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    46名の慢性辺縁性歯周炎患者の同一口腔内に, オフロキサシンを含有する徐放性歯周ポケット挿入剤 (PT-01) 投与部位およびプラセボ製剤投与部位を設定し, 1週間間隔で4回 (0週~3週目) の投与を行う臨床治験を実施した。臨床所見は, プラーク指数, 歯肉炎指数, 歯の動揺度, プロービング時の出血, 排膿およびポケット深さの6項目について各製剤投与時と4週目に評価し, PT-01の有効性と安全性を比較検討した。i薬剤のみの効果を明らかにするため, ブラッシング指導以外のスケーリング, ルートプレーニング等の歯周治療は行わなかった。その結果, 歯の動揺度を除く5項日において, PT-01群がプラセボ群に比較して, 有意な改善を示した。また, PT-01を投与した全46症例において, 副作用は皆無であり, 以上の結果からPT-01による局所化学療法の有用性が示された。
  • 4. TCフィルムの局所投与とルートプレイニング処置による治療効果の比較検討
    三辺 正人, 竹内 佳世, 辻上 弘, 佐藤 悟, 堀 俊雄, 梅本 俊夫, 鴨井 久一, 沼部 幸博, 林 英昭, 池田 克己, 渡辺 幸 ...
    1989 年 31 巻 1 号 p. 266-277
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    歯肉縁上のプラークコントロールが良好な, 歯周疾患患者8名の深さ4ミリ以上のポケットを有する22被検歯に対して, テトラサイクリン固定化架橋コラーゲンフィルム (; TCフィルム) を1週間隔で4回連続投与する処置, ルートプレイニングを1回行う処置および両者の併用処置を行い, その治療効果について, 臨床的ならびに細菌学的に検討した。その結果, 各処置群ともにポケットの深さの減少やポケット測定時の出血の出現率の低下など, 臨床症状の改善が6週から12週にかけ認められた。また, ルートプレイニング群および併用処置群では, 歯肉の退縮が著明に認められた。
    一方, ポケット内の微生物密度は, 各処置井群ともに, 8週まで, 著明に減少し, スビロへ一タの構成比率は, TCフィルム投与群では, 6週まで, ルートプレイニング群および併用処置群では, 8週から12週まで低下した。以上の結果より, TCフィルムの局所投与およびルートプレイニング処置ともに, 歯周治療における有効性が確認されたが, 併用処置の有効性は認められなかった。
  • 5. 根分岐部病変に対するTCフィルム局所投与後の治療効果について
    竹内 佳世, 三辺 正人, 西村 俊彦, 佐藤 悟, 辻上 弘, 堀 俊雄, 梅本 俊夫
    1989 年 31 巻 1 号 p. 278-287
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周疾患患者6名の根分岐部病変 (Lindheの分類でGrade II) を有する大臼歯を各々2歯ずつ選択し, 1歯には, テトラサイクリン固定化架橋コラーゲンフィルム (; TCフィルム) を1週間隔で4回, 歯周ポケット内に局所投与し, 他の1歯には, 何も処置を行なわなかった。臨床的および細菌学的検索は, TCフィルム投与前, 投与後1週, 3週, 5週目に実施し, 以下の結果を得た。 (1) Pocket depth, Attachment level, ポケット測定時の出血の出現率, ペリオトロン値, Gingival index, Plaque indexについては, TCフィルム投与群と未処置群との間に, 実験期間中を通して, 有意な差は認められなかった。 (2) 歯周ポケット内微生物密度および, スピロヘータの構成比率については, TCフィルム投与終了後1週目において, TCフィルム投与群では, 未処置群に比べて有意な減少が認められた。以上の結果から, 分岐部病変を有する大臼歯に対しては, TCフィルムの投与のみでは, 十分な治療効果が期待できないことが示唆された。
  • 第1報歯周疾患治療の流れに沿った使用法
    上田 雅俊, 寺西 義浩, 北村 卓也, 牧草 一人, 白井 健雄, 田中 真弓, 東 浩介, 大橋 哲, 南林 繁良, 山岡 昭, 井上 ...
    1989 年 31 巻 1 号 p. 288-298
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    オフロキサシン配合徐放性歯周ポケット挿入剤 (PT-01) を, 歯周疾患患者に応用して, その効果を検討した。方法としては治療の流れに沿って行なった。すなわち, 1週間隔で2回, PT-01ストリップスを歯周ポケットに挿入し, 試験開始後2週間目にスケーリングを行ない, その後は, スケーリング前と同様に1週間隔で4回投与する群と, 同様な投与間隔および投与方法であるが, オフロキサシンを含有しないプラセボを投与する群と, 試験開始後2週間目のスケーリングは行なうが, 薬剤を一切投与しない群の3群に分け, 臨床的および細菌学的 (培養法) に観察した。その結果, 薬剤投与処置のみの時期およびスケーリング後の時期ともに, PT-01投与群では, 臨床的にはプラセボ投与群あるいは薬剤非投与群に比較して明らかなる改善傾向を示し, 細菌学的には, これら対照群とは有意の差は認められなかったが, 若干の効果が確認できた。
  • 第2報薬剤連続投与とスケーリングとの併用効果
    上田 雅俊, 寺西 義 浩, 橋爪 彰 子, 山本 真, 大野 修一郎, 緒方 智寿子, 小林 律子, 田中 佐和子, 福井 幹夫, 池田 ...
    1989 年 31 巻 1 号 p. 299-309
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    歯周疾患患者の同一口腔内に, オフロキサシン配合歯周ポケット挿入剤 (PT-01) 投与のみの群 (A群), スケーリングとPT-01ストリップ併用群 (S+A群) および両群にプラセボを投与する群 (P群, S+P群) の4群を設け, 週1回, 4週にわたり製剤を投与し, 臨床的および細菌学的 (位相差顕微鏡) に検討した結果つぎのような結論を得た。すなわち, 臨床観察項日の内, プラーク指数, ポケットよりの排膿および歯の動揺度においては, 各実験群ともに経週的な変化はあまり認められなかったが, 他の観察項日, すなわち, 歯肉炎指数, プロービング後の出血の有無, ポケットの深さおよび歯肉溝滲出液量については, A群およびS+A群がP群およびS+P群より, ほとんどすべての時期においてその改善傾向が高かった。一方, 細菌学的観察では, 微生物の密度および総微生物に占める運動性微生物の構成率ともに, A群がP群より, S+A群がS+P群よりすべての期間において低値を示した。他方, 臨床所見と細菌学的観察結果を総合評価したものは, S+A群では4週日および7週日ともに改善率は60%, A群では4週日で50%, 7週日で40%であった。
  • 新しい手術法の開発と臨床応用
    土田 有宏, 長谷川 明
    1989 年 31 巻 1 号 p. 310-317
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    前歯部への補綴物装着後根尖部に病巣を形成し来院する症例に対し, 従来の逆根管充填法による歯根尖切除手術にかわる新しい手術手技を開発した。本法は, フラップを形成し歯根尖部の処置を行った後, 唇側歯槽骨の一部を除去して歯根の唇面を露出し, この部の歯質を削除して根管を開放し, 根管内に残留した罹患象牙質を完全に除去する方法である。開放根管部には, その後, 歯質接着性低粘度コンポジットレジン (クリアフィルSC ®) を 充填する。
    適応は, なんらかの理由で歯冠修復物が除去できず, また根尖部からの処置だけでは不十分と思われる症例である。最終的な手術手段であるが, これによって, 歯の保存が可能になる症例も多い。
  • 宮武 祥子, 原 宜興, 前田 勝正, 赤峰 昭文, 江藤 美由紀, 山田 久仁子, 青野 正男
    1989 年 31 巻 1 号 p. 318-326
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    骨移植材としてのHydroxyapatite (HAP) の有用性について, 臨床的に検討することを目的として本研究を行った。歯周炎罹患患者33名44部位についてHAPの移植を行い, 術後の臨床所見, X線所見およびアタッチメントレベルの獲得について診査した。その結果, 歯肉の炎症は早期に消退し, X線所見では移植したHAPと歯槽骨の再生が起こっているものと思われた。アタッチメントレベルの獲得は術後6ヵ月以上の観察期間で約2.0mm認められた。しかし, 1壁性の骨欠損症例や分岐部病変を含む下顎大臼歯部の症例においては, アタッチメントレベルの獲得量は少なかった。こうしたことから, HAPは臨床的に有用であるが, 1壁性の骨欠損症例や分岐部病変の場合に1989年3月 319は注意して使用しなければならないと思われる。
  • 篠原 啓之, 幸田 直彦, 笠原 信治, 多田 弘子, 永田 俊彦, 石田 浩, 若野 洋一
    1989 年 31 巻 1 号 p. 327-333
    発行日: 1989/03/28
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    合成ハイドロキシアパタイト (BDHAP-101) を歯周疾患による垂直性骨欠損部55ヵ所に充填し, 臨床的およびレントゲン写真による評価を行った。術後6ヵ月目および12ヵ月目に臨床評価項目として, 歯肉辺縁レベル, 歯周ポケットの深さ, アタッチメントレベル, 歯の動揺度, 歯肉炎指数 (GI), プラーク指数 (PlI) を, またレントゲン写真よりアパタイトの補填量を測定した。術後6ヵ月日において平均37. 9%のアタッチメントゲイン, レントゲン写真により74. 5%のアパタイトによる垂直性骨欠損部の補填が認められた。一方, 歯肉辺縁レベル, ポケットの深さ, 歯の動揺度, GIの減少が認められ歯周疾患の改善傾向が著名に認められた。術後12ヵ月目では術後6ヵ月目と比べて有意な差は認められず, アパタイト補填後6ヵ月目以降は安定した経過をたどるものと考えられた。PlIは術前後を通じ常に一定で良好なプラークコントロールを示した。副作用はすべての症例に認められず, 本材により有用率は全症例の89.1%であった。
    以上の結果はBDHAP-101が歯槽骨欠損部のインプラント材として極めて有効であることを強く示唆しているものと考えられる。
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