日本歯周病学会会誌
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歯肉炎症の拡がりに対する付着歯肉の役割に関する実験的研究
呉 啓燮
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1989 年 31 巻 2 号 p. 535-550

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抄録

本実験は, サルを用いて, 外科的に付着歯肉を除去したモデルを作り, 絹糸を歯頸部に結紮することにより, プラークを堆積させ, 付着歯肉の有無が, 歯周組織への炎症の拡がりに, どのような相違があるかを調べた。その結果, 歯肉の炎症は, 実験群において対照群に比べて早期に認められ, その程度は, 経時的に強くなる傾向がみられ, 更に, 実験群においては, アタッチメントの喪失を伴う辺縁組織の退縮が, 12週でみられた。組織学的には, ノッチより上皮の最根尖側細胞迄の距離は, 術前のレベルから根尖側へと, 5週と12週で実験群においてより長くなっていた。更に, 歯槽骨の吸収の程度は, 5週と12週で実験群において著しく, 対照群と統計学的な有意差がみられた。
以上の結果より, 歯周組織での炎症が下層組織へ波及する過程に対して, 付着歯肉を形成する組織構造が, 一定の防禦的役割を果たしていることが示唆された。

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