1989 年 31 巻 2 号 p. 551-572
移植材を填入した際, その使用が対応根面上へのセメント質形成を促進し得るか否かを検索する目的でtricalcium phosphate (TCP), 凍結粉砕サル脱灰骨 (脱灰骨) およびhydroxyapatite (HA) をニホンザルの人工的骨欠損部へ填入し, 骨再生と共にセメント質形成過程を比較検討した。 その結果, 各週とも2週例では, 欠損部内は線維性結合組織によって満たされていたが, 吸収性のTCPあるいは脱灰骨を填入した群においては, 他の群に先駆けて根面上にcementoid均質層が認められた。 殊に, 脱灰骨填入例では石灰化傾向をも示していた。4週例において, かなりの部分が骨再生した対照群でも根面上にセメント質形成が見られたが, TCPあるいは脱灰骨填入例に比べて劣っていた。 一方, 非吸収性HA填入例においては, 骨再生がかなり遅れ, 根面上へのセメント質形成も他の群よりも劣っていた。 以上のことからセメント質形成には, 近接部での骨再生も密接に関与するものと思われるが, それ以上に移植材の吸収, それと表裏一体となって生じてくる新生骨の添加, すなわち吸収, 添加と言う現象が根面上へのセメント質形成をより促進させ得るものと考えられた。