1989 年 31 巻 2 号 p. 633-639
本研究の目的は, 歯周治療後のセメント質の再生の過程を経時的に観察するために硬組織ラベリング法を応用し, その効果を検討することであった。
3頭の日本猿の左右両側の下顎大臼歯および小臼歯の近心隣接面部に実験的歯周炎を惹起し, 4週後にスケーリングおよびルートプレーニングを行なった後, テトラサイクリン, カルセイン, アリザリンコンプレクソンの各ラベリング剤を投与した。非脱灰研磨標本作製後, 螢光顕微鏡, コンタクトマイクロラジオグラフィー (CMR) およびトルイジンブルー染色によって組織学的な観察を行なった。
硬組織ラベリング剤を応用することにより, 螢光顕微鏡下でセメント質の再生過程を経時的に観察することができた。また, 再生されたセメント質の存在はCMRとトルイジンブルーによる観察によっても裏付けられた。
さらに, 歯根面の処置後2週という短期間の観察でセメント質の再生が観察された。