日本歯周病学会会誌
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ヒト歯周疾患罹患歯のルートプレーニングおよびクエン酸処理歯根面に対する細菌侵入に関する研究
伊藤 公一荒井 法行音琴 淳一村井 正大
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1989 年 31 巻 2 号 p. 658-666

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抄録

要抜去と診断されたヒト歯周疾患罹患歯18歯を実験に供した。14歯の両隣接面にスケーリング, ルートプレーニングを施し, いずれか一方をRP処理歯根面とし, 他方にクエン酸 (pH1.0, 3分間) 処理を行いCA処理歯根面とした。なお, 未処置歯4歯をコントロールとした。4週後に抜去した歯の歯根象牙質への細菌侵入に関して光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡による組織学的な観察を行い, 以下の結論を得た。
1. 未処置歯面にはセメント質が認められ, 象牙細管に細菌侵入はなかった。
2. RP処理歯根面で10面中5面 (50%), CA処理歯根面で10面中9面 (90%) に細菌侵入を認めた。
3. RP処理歯根面はCA処理歯根面と比較すると細菌侵入距離 (9.5±24.1μm vs 84.6±136.3μm) および細菌侵入細管率 (0.8±2.1% vs 20.3±17.3%) は小さかった。
4. 歯肉縁上に相当するRPおよびCA処理の歯根象牙細管中に連鎖状の球菌あるいは短桿菌様細菌を認めた。
5. CA歯根面に細菌が侵入しやすくなることから, プラークコントロール不良の患者に対するクエン酸処理は為害性をおよぼすことが示唆された。

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