サルを用いてヒトに類似した外傷性咬合の実験モデルを作製し, 臨床的ならびに病理組織学的に歯周組織の変化を検索した。実験開始にあたり, 上下顎左右側犬歯歯冠を歯齦辺縁部から切断・除去するとサルはブラキシズムを開始した。そのサルに対して実験歯である上顎第2小臼歯頬側咬頭内斜面に, 咬頭嵌合位には変化を与えない修復物を装着した。その結果, 修復物装着6週後まで実験歯の動揺は増加し続け, その後は一定化した。病理組織学的には, 修復物装着後4週までは組織の損傷性変化が, 8週以降では修復性変化が主体をなしていた。また, 観察期間の途中で修復物を除去し, 犬歯を術前の状態に復位させた場合には実験歯の動揺は急激に減少し, 歯槽骨頂部歯根膜側に著明な骨添加が観察された。以上より, 本法によってサルに咬合性外傷を生じさせることができた。また外傷性咬合による変化は可逆性を示し, 徹底したプラークコントロール下では歯周ポケットは形成されなかった