1990 年 32 巻 2 号 p. 698-705
障害者の歯周疾患に関する実態を知る目的で, 長崎県内の障害者144名の歯周組織の状態について診査を行った。代表歯6歯 (6 14 41 6) の近心頬側部のProbing Pocket Depth (PDD), Gingival Index (GI), Plaque Index PII), Calculus Index (CI) を調べた。また, アタッチメントレベルとX線写真により, 歯肉炎と歯周炎に分類 (し各々の罹患率を調べ, また歯肉増殖についても調査した。その結果, 全体の99%が歯周疾患に罹患しており, そのうち, 歯周炎は約58%であった。歯周炎の罹患率は10歳代で22%, 20歳代で43%と若年層においても高率であった。PPD, GI, PII, CIの各平均値は健常者より高く, また, 知能程度や在宅と施設の障害者について比較すると, 歯周炎罹患率や歯周組織の状態に差が認められた。抗てんかん剤服用者のうち約31%に歯肉増殖が認められ, これらの者の多くに歯列不正が認められた。