抄録
インプラント界面骨と微小循環について, 実験的にビーグル犬下顎骨にチタン・インプラント (ADSインプラント) を植立, 上部構造を装着して9カ月間咬合させた後, 主に骨付き微細血管鋳型法を用いて試料を作製, これを走査型電顕で観察した。その結果, インプラントと接する界面組織は骨ならびに小塊状の線維性結合組織であった。この小塊内には特異な分布形態・走行を示す毛細血管が小数分布し, この毛細血管と近接する界面骨には骨吸収窩 (ハウシップ窩) が観察された。これに対して血管の存在しない界面骨の表面には, ハウシップ窩は観察されなかった。いずれにせよ, インプラント界面全体に分布する毛細血管は極めて少なかった。一方, 界面骨の裏側, すなわち骨髄側には近接して特異な毛細血管網が密に分布する箇所があり, この部位の骨表面には無数のハウシップ窩が観察された。
以上のことから, 界面骨の厚さは骨髄側でコントロールされ, 一度形成された界面骨の代謝活性は極めて低く, 環境変化に素早く対応することが出来ない状態にある, ということが微小循環の面から示唆された。