抄録
種の線毛タイプのPorphyromonas gingivalisを含む歯周病原性細菌の病変部歯肉における存在を検討する目的で, 成人性歯周炎患者の病変部歯肉を採取し, PCR法を用いて各線毛タイプのPgingivalis, Tre-onema denticola, Bacteroides forsythus, Prevotellaintermedia, Actinobacillus actinomycetemcomitansにP ついて検索した。また, 歯周外科処置前後での歯肉縁下プラーク中の各歯周病原性細菌の動態についても検討した。その結果, 今回調べたいずれの歯周病原性細菌も, 病変部歯肉サンプルから検出された。特にP.gingivalis (100%),T.denticola (81.4%), B.forsythus (64.3%) が高い検出率を示した。また,歯肉縁下 プラークのそれと類似していたことから, 特異的に歯肉組織から検出される細菌種のないことが示唆された。P.gingivalisの線毛タイプ別では,TypeII線毛を有するP.gingivalisの検出率が最も高く, ついでTypeIとTypeIIの共存例の率が高く, TypeII線毛のP.gingivalisが単独で,あるいはTypeI線毛との共存下で成人性歯周炎の病変部歯肉組織に存在する可能性の高いことが強く示唆された。
メインテナンス期の歯肉縁下プラーク中では, 今回調べた全ての歯周病原性細菌の検出率も歯周外科処置前と比較して有意に低下する事が明らかとなった。P.gingivalisの線毛タイプ別ではType II単独例の検出率が歯周外科処置後著明に低下していた。この成績からもType II線毛を有するP.gingivalisが成人性歯周炎の発症・進行に密接に関連することが示唆された。