抄録
歯周病は要因のすべてが解明されていない多因子疾患であり, 歯周病に関連する遺伝子多型が注目されている。そこで, 系統的総論の方法により遺伝子多型と歯周病の関連を解析した。Medlineなどの各データーベースより, 遺伝子多型と歯周病に関する研究を検索した。適格基準は歯周病患者と健康なコントロール間の遺伝子多型の関係を解析している研究である。除外基準は歯周病原性細菌やインプラントに関係する遺伝子の研究などとした。結果は, 44の論文が選択規準を満たし, Fcγ 受容体に関するのが7論文, インターロイキン-1 (IL-1) が14論文, TNFが8論文, 他の遺伝子多型が16論文であった。多くは研究方法と患者ならびにコントロールの定義を明確に記載していた。臨床症状を遺伝解析担当者へ盲検してあるかの記載がない研究も存在した。Fcγ は, 7研究すべてが歯周病との関係ありとしていた。IL-1は6論文中2論文が関係あり, 若年性歯周病との関係は3論文中1論文が関係あった。TNFはすべての8論文が遺伝子多型と歯周病の間に有意の関係を示さなかった。対象者の人種の違いなどのため, 歯周病の罹患に関する数量的な統合は行わなかった。歯周病と一部の遺伝子多型と関係を示したが, 逆の関係を示す研究も存在した。今後は, 歯周病の診断の定義を明確にし, 対照を伴う研究が必要であり, これらの研究を通じて歯周病治療と予防に貢献することが望まれる。