パーソナリティ研究
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原著
自己愛の病理性の性差
—他者への依存と自己誇大化
松並 知子
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2014 年 22 巻 3 号 p. 239-251

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抄録

本研究の目的は自己愛の病理性の性差を検討することであった。大学生354名を対象に性差を検討した結果,未熟な自己愛の測定尺度の下位尺度のうち,「自己誇大化」は男性>女性,「他者への依存」は女性>男性という有意差が見られた。また「基本的信頼感」と自尊感情は男性が有意に高く,「対人的信頼感」は女性が有意に高かった。さらに自己愛の側面と基本的信頼感の関連を検討した結果,男女ともに「他者への依存」は自尊感情・「基本的信頼感」と有意な負の相関,「自己誇大化」は双方と有意な正の相関が示され,依存性こそが自己愛の病理であることが示唆された。また男女別に重回帰分析を行った結果,男性の場合は「基本的信頼感」から「他者への依存」「注目賞賛願望」には有意な負のパスが,「自己誇大化」へは有意な正のパスが見られたのに対し,女性の場合は「他者への依存」に有意な負のパスが示されただけだったことから,男女で自己愛の病理の表れ方が異なることが示された。

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© 2014 日本パーソナリティ心理学会
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