財政研究
Online ISSN : 2436-3421
研究論文
北海道内市町村における銀行等引受債の金利に関する実証分析
―地域金融機関による寡占の弊害と公的資金の役割の検証
石田 三成
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2014 年 10 巻 p. 224-241

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抄録

 本稿では北海道内の市町村を対象として,①市町村が銀行等引受債を起債するにあたり,地域金融機関同士の競争環境が弱いと,地域金融機関の交渉力が強くなるため,銀行等引受債の金利スプレッド(対財政融資資金貸付金利)が上昇する,②公的資金のウェイトが高い地域では,公的資金が地域金融機関の競合相手として機能するため,地域金融機関による寡占の弊害が小さくなり,銀行等引受債の金利スプレッドも低下する,という2つの仮説を定量的に検証した。その結果,2つの仮説がともに支持された。主要な結論は以下のとおりである。まず,入札や見積合わせに参加する地域金融機関数が多くなるほど,銀行等引受債の金利スプレッドは低下することが明らかとなった。次に,非競争的な随意契約であっても指定金融機関以外の金融機関から資金を調達することで,わずかに金利スプレッドを引き下げることが可能である。最後に,公的資金のシェアが高い地域ほど銀行等引受債の金利スプレッドが低くなる傾向が確認され,公的資金は地域金融機関による寡占の弊害を軽減していることが示唆された。

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© 2014 日本財政学会
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