2019 年 15 巻 p. 181-193
本稿では,わが国の所得税制における扶養控除額の変化を利用し,最適課税論の中心的パラメータであるETI(the Elasticity of Taxable Income with respect to the net-of-tax rate)およびEGI(the Elasticity of Gross Income with respect to the net-of-tax rate)を推計した。データには日本家計パネル調査(JHPS)の個票パネルデータを用い,家計の異質性を十分に反映させながら推計を行った。その結果,ETIの推計値は0.7前後,EGIの推計値は0.5前後であるとの結果が得られ,扶養控除額の変化は,家計が直面する限界税率の変化を通じて所得決定に影響を与えていたことが示唆された。