2007 年 3 巻 p. 270-290
1990年代末以降のブラジルでは緊縮財政が避けられないものとなっていくが,本研究は,財政政策と金融政策の交錯点である国債管理政策の分析を通じて,そうした背景を明らかにしようとするものである。90年代初頭のブラジルでは,対ブラジル投資の再活性化のために開始された一連の経済の「自由化」政策およびドル・ペッグ制を活用したインフレ抑制政策と整合的な国債管理が行われるが,それは中長期的な利払い負担の抑制,適正なリスク水準の維持,国債市場での円滑な取引を目指すものであった。分析の結果,ブラジルの国債管理政策が,利払い負担の軽減から国際金融市場との連関を深めることで,外在的な通貨危機の影響をより深刻化させたということが明らかとなった。