2013 年 9 巻 p. 283-301
近年,人口の高齢化により勤労所得から公的年金給付への所得の代替が進んでいる。年金給付の増加は大きく,勤労所得の減少のかなりの部分を賄うが,公的年金等控除の影響などで年金の多くは課税ベースから除かれるため,やはり課税ベースは縮小してしまう。しかし,こうした税制を維持したままでは,今後個人住民税の課税ベース縮小がとどまることなく進む可能性がある。その結果,さらなる税収ロスとともに,地方自治体間の税収調達力格差の拡大が懸念される。こうした問題意識をもとに,本稿では経済低迷による勤労所得減少や税制改革の効果をコントロールしつつ,高齢化が個人住民税の課税ベースに及ぼす影響について計量分析を行う。そのうえで,日本の税制の問題点を検討する。