2000 年 11 巻 1 号 p. 71-79
Venous aneurysm(VA)はまれな疾患で,しばしば肺血栓塞栓症の原因となることがある.1991年1月~1998年12月の8年間に当科では7例のVAを経験した.
発生部位では,外頸静脈が2例,足背静脈が2例,小伏在静脈が2例で,肘部橈側皮静脈が1例で,いずれも末梢領域に発生した静脈瘤であった.性別は男2例,女5例であり,年齢は,11~77(平均53.3)歳であった.主訴は全例で腫瘤の触知で,診断はCTや血管造影などで行われた.静脈瘤の形態は,7例中4例が嚢状瘤で,3例が紡錘状の瘤であった.また,7例中3例では瘤内に血栓形成が認められた.全例で外科的切除を施行したが,うち2例では,末梢領域に発生した静脈瘤であるにかかわらず,静脈の血行再建術(端端吻合)を追加し,良好な結果を得た.さらに,7例中4例では,局所麻酔下に外来通院で,手術を施行した.病理組織学的には,全例で静脈壁の非薄化や内外の弾性線維層の断裂が認められ,うち3例では内膜肥厚の共存が確認された.術後のfollow-up期間は最長7年であるが,特に問題なく経過している.
膝窩静脈や門脈,上大静脈に発生したVAでは,肺血栓塞衿症や破裂を招来することがあり,発見すれば手術適応があるとされている.一方,末梢に発生したVAでは,肺血栓塞栓症や破裂の報告例はないが,痔痛や違和感が出現しやすく,また瘤内に血栓形成が生じやすいため,発見すれば手術適応があるものと考えている.