2000 年 11 巻 1 号 p. 81-88
Tenascin(TN)は細胞外基質糖蛋白の1つであり,形態形成や組織修復に関与している.TNの静脈における発現を免疫組織化学的に検討した.静脈壁において,TN発現の程度は大伏在静脈および静脈瘤壁に高度で,以下,下大静脈,肺静脈,内頸静脈,門脈,肝硬変例門脈の順であった.TNは門脈を除き若年期から発現し,中年期まで増加傾向を示し,老年期では顕著な増減はみられなかった.門脈ではTN発現は遅く,中年期まで微増するが,老年期で減少した.TNは,静脈の拡張・収縮というダイナミックな動きあるいは内圧や加齢による壁の再構築に対応して他の問質成分とともに壁構築の維持,修復に関与していると考えられた.TN発現部位は,中膜を主体に平滑筋細胞周囲に認められた.TNは,血中からの侵入物質に対し平滑筋細胞自身を防御するとともにTN自身が持つ弾力性により静脈の拡張・収縮における潤滑剤的役割も果たしているのではないかと考えられた.