静脈学
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原著
腹部悪性腫瘍に対する下大静脈合併切除・再建術の意義とその適応例
前場 隆志前田 肇
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ジャーナル オープンアクセス

2000 年 11 巻 4 号 p. 295-301

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抄録

Inferior vena cava(IVC)進展を認める肝癌や腎癌に対し,IVC再建を伴う外科切除の意義を検討した.対象は肝癌11例(IVC腫瘍塞栓1例,直接浸潤10例)と腎癌7例・副腎癌1例(いずれもIVC腫瘍塞栓)である.腎癌の1例を除き肉眼的癌遺残は認めなかった.

IVC再建は直接縫合13例,パッチグラフト1例,人工血管置換5例で,術後早期のIVC関連合併症はなく全例耐術した.肝癌は全例再発し(平均9.2ヵ月),90%が肝再発,腎・副腎癌は5例が再発し(平均12.3ヵ月),80%が肺再発であった.腎癌の術後1・3・5年生存率は100・43・43%,肝癌の1・3年生存率は64・13%,通算在宅率は腎癌において平掏76%,肝癌において48%で,いずれも肝癌が不良な成績であった.

IVC進展例に対する外科切除は,術後早期QOLの改善は認めるものの,腎癌に比べ肝癌では手術侵襲度に適うだけの長期QOLは得られておらず,肝再発に対する有効な予防手段が確立されない限り,手術適応には慎重とならざるを得ない.

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