静脈学
Online ISSN : 2186-5523
Print ISSN : 0915-7395
ISSN-L : 0915-7395
13 巻, 3 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
巻頭言
追悼文
総説
  • 中瀬 裕之, 開道 貴信, 新 靖史, 西岡 利和, 榊 寿右
    2002 年 13 巻 3 号 p. 181-185
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    脳外科手術中の脳静脈損傷により術後静脈梗塞を起こした自験例から,脳静脈灌流障害の病態と治療を検討した.対象は,男性3例女性5例(平均58.1歳)の8症例である.手術は脳腫瘍摘出術5例・cavernoma摘出術1例・dural AVF摘出術1例・神経血管減圧術1例.症状の発現は手術中2例・術当日3例・術後1日1例・術後3日1例・術後4日1例で,症状として,術中脳腫脹2例・見当識障害1例・小脳症状1例・片麻痺1例・失語2例・頭痛1例がみられた.外科的療法を要したものが2例,保存的に対処できたものが6例である.症状の発現が早いものほど重篤な症状がみられた.予後は良好が6例,軽度障害を残したものが2例であった.

    以上より,(1)急激に脳静脈潅流障害を起こしてくる群と二次性静脈血栓の進展により緩徐に症状が発現してくる群があり,前者ほど症状は激烈で早期から外科的処置を含めた治療が必要となり,後者では静脈血栓の二次的進展の防止が重要となる.(2)術後静脈梗塞の症状や程度は様々であるが,早期の治療により良好な経過をとる.

  • 進藤 俊哉, 多田 祐輔
    2002 年 13 巻 3 号 p. 211-216
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    後腹膜平滑筋肉腫は稀であるが予後不良の疾患である.外科的に局所を完全に切除することが治療の第一選択であるが,再発率は高い.大血管,特に下大静脈に進展しやすく手術の際には血管損傷や肺梗塞の予防などの注意が必要である.下大静脈を巻きこんだ後腹膜平滑筋肉腫を当科で3例経験した.そのうち1例は初発例で2例は再発例であった.手術の際には腫瘍の被膜に沿った部位で剥離するのではなく,下大静脈を腫瘍から離れた部位で剥離し腫瘍とともに合併切除することで安全に局所切除することができた.下大静脈内の腫瘍先進部は静脈壁と固着性が弱く引き抜くことが可能であった.また再発例であっても術後生命予後と生活の質の改善が得られた.このように大血管に進展した後腹膜平滑筋肉腫は,その血管を周囲組織から鋭的に剥離し腫瘍とともに合併切除することで完全な局所切除が可能であると考えられた.

  • 石橋 宏之, 太田 敬, 杉本 郁夫, 竹内 典之, 永田 昌久, 本多 靖明
    2002 年 13 巻 3 号 p. 217-222
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    ナットクラッカー症候群(左腎静脈捕捉症候群)は,左腎静脈が上腸間膜動脈と大動脈との間で圧迫され,左腎静脈還流障害から血尿,腰痛などを呈する疾患である.

    症例1:24歳,男.15歳時から肉眼的血尿と左側腰痛を認めた.貧血はなく,腎機能は正常であった.上腸間膜動脈-大動脈間距離は4mm,左腎静脈-下大静脈圧較差は6.8cmH2Oであった.症例2:16歳,男.11歳時から肉眼的血尿を認めた.軽度貧血があったが,腎機能は正常であった.上腸間膜動脈-大動脈距離は6mm,左腎静脈-下大静脈圧較差は5.4cmH2Oであった.いずれも左腎静脈転位術を行った.症例1は症状が消失した.症例2は吻合部が閉塞したが,保存的治療により軽快した.

    左腎静脈転位術は,左腎静脈が下大静脈に流入する部位を切離し,大動脈-上腸間膜動脈間距離が広い尾側に再吻合するものである.侵襲も少なく,確実な術式であるが,2例目が閉塞したのは反省すべき点であった.

原著
  • 飛田 研二, 黒瀬 公啓, 塩澤 寛敏, 小畑 貴司, 原田 良知, 小林 昌義, 四方 裕夫, 坂本 滋, 松原 純一
    2002 年 13 巻 3 号 p. 187-192
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    我々が行っている片足立ち法での空気容積脈波法(APG)による下肢静脈機能評価を用いて,健常(N)12例,20肢,一次性静脈瘤(V)29例,42肢,深部静脈血栓症(D)15例,19肢を対象として比較検討した.静脈還流率(%)はN:40.2±10.3,V:47.2±6.4,D:36.5±7.3であり,NとDはVより少なかった.静脈容積量(ml)はN:84.2±22.6,V:130.3±36.1,D:82.2±28.7であり,NとDはVより少なかった.静脈流入率(ml/sec)はN:1.1±0.7,V:5.8±4.0,D:3.6±2.7であり,VとDはNより多く,VはDより多かった.駆出率(%)はN:50.4±16.4,V:38.7±13.2,D:30.0±11.7であり,VとDはNより少なく,DはVより少なかった.静脈血残存率(%)はN:33.3±21.0,V:41.6±19.6,D:56.6±37.8であり,DはV,Nより多かった.APGのみでの確定診断は不可能であるが,Vでは病態を良く反映していた.Dでは発症早期か陳旧性かといった病期による病態の違いを考慮する必要がある.

  • 広川 雅之, 井上 芳徳, 菅野 範英, 地引 政利, 玉井 諭, 久保田 俊也, 栗原 伸久, 中島 里枝子, 岩井 武尚
    2002 年 13 巻 3 号 p. 193-197
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    膝窩部血管捕捉症状がないが足関節背屈によって末梢動脈拍動が減弱もしくは消失する(Plantar Dorsal Flexion [PDF] テスト陽性)症例を機能的膝窩静脈捕捉症候群と呼ぶ.本症と関連して深部静脈血栓症(DVT)を起こしたと考えられた3例を経験した.症例1は73歳男性,両下肢の腫張で来院,両下肢のPDFテスト陽性であった.静脈撮影では左膝窩静脈はDVT後再管疎通の所見で右膝窩静脈は他動的足関節背屈によって狭窄を認めた.右膝窩静脈の捕捉があることから左側にも捕捉があると推測された.症例2は81歳男性,右下肢静脈瘤および腫張で来院,右のPDFテスト陽性であった.静脈撮影では右膝窩静脈に血栓を認めたが,再疎通後には足関節背屈によって膝窩静脈の圧迫が認められるようになった.症例3は52歳男性,左下腿腫張にて来院,左のPDFテスト陽性であった.静脈撮影では左膝窩静脈内に血栓および足関節背屈による膝窩静脈の圧迫が認められた.症例1・2は肺血流シンチにて肺塞栓が疑われた.全例,弾性ストッキングおよび抗凝固療法にて症状は軽快している.正常人でも一定の割合で認められる機能的膝窩静脈血管捕捉症候群が下腿DVTの原因の一つとして関与している可能性が示唆された.

  • 火伏 俊之, 東 輝仁, 岩崎 年宏, 奧本 泰士, 殿最 賀津美, 光定 伸浩, 赤木 秀治, 山本 忠生
    2002 年 13 巻 3 号 p. 199-204
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    最近1年間に経験した急性肺動脈塞栓症(acute pulmonary embolism: APE)6例を検討し,その臨床像を報告する.全例女性で,年齢は64歳から94歳(平均79歳).高齢で臥床傾向が3例,向精神薬服用中が2例,整形外科手術後が1例であった.症状,病歴などからAPEを疑い,心エコーで右心負荷所見を確認した後,直接血栓の確認を試み超高速造影CTを施行した.全例で肺動脈内血栓を確認した.治療法は患者の背景により適宜決定した.全例で超高速造影CTでの病態追跡を行い,血栓の縮小,消失を確認した.3例が80歳以上の高齢者,2例は向精神薬服用中の精神分裂病患者で,血栓溶解剤の投与は制限されたが,ヘパリンの投与とワーファリンの内服で全例軽快退院した.早期診断には,心エコーと超高速造影CTの組み合わせが有用であった.向精神薬には抗リン脂質抗体を誘発させる可能性が報告されており,注意が必要である.

  • 岩田 博英, 平井 正文, 城所 仁, 早川 直和
    2002 年 13 巻 3 号 p. 205-209
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    外来受診した下肢静脈瘤患者296人を対象として,治療法を4つの群に分類し,治療法別に治療内容を決定するのに影響を及ぼした患者側因子について検討した.ストリッピング手術群と結紮併用硬化療法群との比較では,病悩期間がストリッピング手術群で有意に長かった(p<0.05).硬化療法単独群では皮膚症状を有する症例はなく,1/2再充満時間でも,ストリッピング手術群(p<0.01),結紮併用硬化療法群(p<0.01)と比較して有意に長く,静脈還流障害が軽度であることが示された.受診動機別の観察では,医療機関からの紹介患者は積極的治療を受ける頻度が,治療経験者からの紹介患者や紹介なしの患者に比較し有意に高率であった(p<0.05).しかし医療機関からの紹介患者でも下肢の症状が静脈還流障害に起因するとは考えられない症例も37.5%と少なくなく,鑑別診断が重要と考えられた.

症例
  • 高山 豊, 児玉 俊, 井利 雅信, 杉下 岳夫, 大野 烈士, 田中 一成, 山下 宏治
    2002 年 13 巻 3 号 p. 223-227
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    静脈内異物の4例を経験したので報告する.症例は38歳から90歳,男性1例,女性3例で,異物は中心静脈カテーテルを誤って自己抜去した際のカテーテル片(2例),カテーテル留置時のガイドワイヤー(1例),心腔内の電気生理学的検査時に挿入したシースイントロデューサーの断片(1例)であり,いずれも医原性であった.これらは,右内頚静脈から大腿部(1例),上大静脈から右心房(2例),右外腸骨静脈(1例)にあって,手術により(2例),経皮経管的に(1例),あるいは両者の併用により(1例)除去した.除去までの時間は1時間30分から4ヶ月であったが,除去に際して肺塞栓等の合併症を生じなかった.

    静脈内異物はそのほとんどが医原性であり,その除去には安全で,確実な,臨機応変の法を選択すべきである.

  • 岩田 博英, 平井 正文, 城所 仁, 早川 直和
    2002 年 13 巻 3 号 p. 229-232
    発行日: 2002年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル オープンアクセス

    下肢静脈瘤において出血は稀な合併症であるが,死亡症例も報告されている.今回われわれはBlue blebsから出血をきたし,結紮併用硬化療法を施行した1例を経験した.57歳の男性で,既往歴に塞栓源不明の肺梗塞のある症例である.10年前より両側下肢の静脈瘤に気付いていたが,入浴後,タオルで足を拭いている際に右足関節内側部位のblue blebsからの出血に気付き,近医受診し圧迫止血を受けた.その後,当院を再出血予防目的で受診した.治療方針としては,本人が静脈瘤自体の治療は希望しなかったので,再出血を防ぐことを主眼とした.まず静脈性高血圧の軽減と塞栓源不明の肺塞栓症の再発予防のため,両側高位結紮術を施行した後,出血部位のblue blebs及びその周囲に硬化療法を施行した.治療後10カ月再出血を認めていない.

静脈疾患サーベイ
feedback
Top