2009 年 20 巻 1 号 p. 19-23
静脈形成異常は血管形成異常に分類されるが様々な分類が存在し,複雑でることが多い.今回われわれは,発生学的にもまれな静脈形成異常の1例を経験したので報告する.症例は61歳,女性.半年ほど前より左下腿に半手拳大の腫瘤を認め,当科を受診した.腫瘤は触診上で脂肪腫の様であり,下腿を挙上しても消失しなかった.超音波検査にて動静脈奇形や動静脈瘻は否定され,孤立性の静脈形成異常と診断し,摘出術を施行した.摘出標本の病理組織学的検査では,海綿状血管腫と診断されたが,今までいわゆる海綿状血管腫と診断されていた病変の多くは静脈形成異常である.また静脈形成異常は胎生期より存在し,思春期までに増大することが多く,高齢で発症する例は極めてまれである.今回の症例では,さらに手術の際に明らかな流入血管や流出血管を認めず,発生学的にも議論の余地が残った症例であった.