2010 年 21 巻 1 号 p. 71-76
【症例1】83歳男性.右肘窩部の腫瘤を自覚して受診.肘正中皮静脈が最大径約2cmに紡錘状に拡張していた.血管造影検査を行ったところ,上腕動脈から比較的早期に腫瘤を介して静脈が造影され,微小な動静脈瘻の存在が疑われた.局所麻酔下に腫瘤を切除した.病理所見は動脈系と静脈系血管の混在がみられarteriovenous malformationと診断された.【症例2】59歳女性.左肘窩部の腫瘤を自覚して受診.最大径約2cmの扁平円盤状を呈していた.超音波検査では内部に隔壁を有し,静脈との交通が確認された.局所麻酔下に腫瘤を切除した.病理所見は肥厚した血管壁を有したvenous malformationと診断された.2症例はいずれも病理学的には形成異常であり,生下時よりあった無症候性の小さな腫瘤が徐々に増大したものと推測される.しかし,患者本人の申告では採血を繰り返ししたことが誘因となっており,成人してからの発症であることから後天的な要因を否定しきれない.きわめてまれではあるが,針穿刺が誘因となって無症候性の小さな血管形成異常が増大した疑いがある.同一部位への針穿刺はなるべく避けることが望ましいと考えられる.