2010 年 21 巻 1 号 p. 9-16
58例のBadd-Chiari症候群(BCS)に対して,直視下に閉塞下大静脈,肝静脈の再開通を行った.2例を手術で失った(手術死亡率;3.4%).術後退院時にはIVC圧の低下,肝機能の改善を認め,また可及的多くの肝静脈の再開通により術前の門脈圧亢進症が改善して食道静脈瘤の消失を12例で認めたさらに術後遠隔期においても5例で食道静脈瘤の消失を確認した.術前後を通じて14例に肝細胞癌(HCC)の合併を認め,うち術前から合併を診断されていた3例はBCS直視下手術時に肝部分切除術を併施した.術後遠隔期に発症した11例中,2例はtrans-catheter chemoembolization(TAE)を行い,8例に対してはTAE後肝部分切除を行った.術後遠隔期において15例を,肝不全(n=2),HCC (n=2), Behçet病関連死(n=2),ほか(n=9),であり,術後最長29.7年までの累積生存率は5,10,15,20,25年には,87.2%(n=37),74.9%(n=22),64.3% (n=17),60.5%(n=8),39.7%(n=1)であった.これをHCC合併症例群(n=14),非合併群(n=40)の両群に分けて比較すると有意差を認めず,術後遠隔期においても綿密な術後経過観察によりHCC合併症例においても良好な経過を示すことが明らかとなった.