抄録
●要 約:2008年岩手・宮城内陸地震および2011年東日本大震災発生後,携帯型超音波診断装置を用いた深部静脈血栓症(DVT)スクリーニング検査を避難所にて行った.対象は岩手・宮城内陸地震発生後3年目,東日本大震災発生後5週目までに検査を行ったそれぞれ127名,330名である.東日本大震災発生後5週目までのDVT発生リスク要因分析を多変量解析にて行い,岩手・宮城内陸地震発生後3年目までに追跡し得たDVT陽性20例をもとにKaplan-Meier法を用いて経時的なDVT残存率を推定した.東日本大震災では74例(22%)にDVTを認め,下肢外傷,トイレを控えたことが統計学的に有意であった.また岩手・宮城内陸地震後の追跡調査では1年半までにDVT残存率は55%まで漸減し,3年後には16%へ低下した.遷延するDVTの存在を考慮すると災害時における静脈血栓塞栓症対策には早期のDVT予防介入と継続したフォローアップ検査が重要であると考えられた.