静脈学
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総説
東日本大震災被災地でのエコノミークラス症候群
植田 信策
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2012 年 23 巻 4 号 p. 327-333

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抄録

●要  約:2004年の新潟県中越地震以降,避難生活において深部静脈血栓症(DVT)が多発することが知られている.石巻地域の避難所での下肢静脈エコー検診においても高いDVT陽性率が認められた(最大45.6%:3月).3月~5月において,津波で浸水した避難所は非浸水避難所に比較し明らかにDVT陽性率が高く(それぞれ36.4%,20.7%,P<0.001),さらに,多数の避難者によって密集した避難所では震災後1カ月で高齢者の6.3%に明らかな日常生活自立度の低下を認めた.以上より,津波で衛生環境の悪化した避難所での嘔吐・下痢症に伴う脱水や,不潔なトイレを忌避して飲水を控えたことによる脱水と,密集した避難所での高齢者の活動性低下などが,高いDVT陽性率の原因と推測された.これらより,震災後,とくに津波被害の著しい場合は,衛生環境が悪く,密集した避難所のある浸水地域からの速やかな二次避難が求められる.

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