要約:腹部大動脈瘤破裂手術と腹部大動脈瘤待機手術の周術期VTE 発症率を比較検討した.2009 年8 月から2010 年7 月に腹部大動脈瘤破裂に対し緊急人工血管置換術を施行した8 例(R 群)と,腹部大動脈瘤に対し待機的に人工血管置換術を施行した18 例(E群)を対象とした.各群における術前因子,術中因子およびVTE 発症を含めた術後経過を比較検討した.術後VTE を合併したのはR 群では4 例(50.0%),E 群では2 例(11.1%)であり,R 群で有意に多発した.DVT 進展部位はR 群で中枢型3 例(37.5%),遠位型1例(12.5%)であり,E 群では2 例(11.1%)とも遠位型であった.R 群で中枢型DVT を発症した3 例中,1 例(12.5%)を続発したaPE で失った.破裂手術後のVTE 発症率は高率であり,現行よりさらに厳密な周術期VTE 予防および積極的なVTE スクリーニングによる早期発見・治療が必要であると考えられた.