分光増感において強色増感, 特に正孔捕獲型強色増感は重要な技術である。強色増感剤の正孔捕獲能力の速度論的指標を得るために, 正孔捕獲型強色増感剤から1電子酸化されたシアニン色素 (色素正孔) への1電子移動反応の速度定数を, pH=2から12の範囲で測定する方法を開発した。次に, 電子移動反応の再配置エネルギーを, 速度定数と反応の自由エネルギー変化の間の関係に基づいて求めた。再配置エネルギーは小さいほど, 電子移動は速く進行する。正孔捕獲型強色増感剤に共有結合で連結されたシアニン色素に関する蛍光消光実験により, 小さな再配置エネルギーを持つ強色増感剤部分は, シアニン部分からの蛍光を効果的に消光し, 対照的に大きな再配置エネルギーを持つ強色増感剤部分は, シアニン部分からの蛍光を消光しないことが分かった。