抄録
自然電位法は,地下を流動する水に対して感度を有する物理探査法であることから,多くの地熱・火山地域や丘陵地,斜面などで地下水や熱水の流動系を理解することを目的とした調査が行われてきた.また,水域においても水底(地下)で生じている自然電位分布は,水中や水面上に設置した電極によって測定可能であることが知られており,海底湧水調査や海底熱水鉱床探査などに活用されている(例えば,後藤ほか,2004;Kawada and Kasaya,2017).しかし,水底で生じた電位差を水面(あるいは水中)の電極で測定する場合に受ける様々な影響については不確定である要素も多く,そのため,電極-水底間距離(水深)が変化するような場合に得られる自然電位分布の解釈を難しくしている.
そこで本研究では同一地点において測定深度を変えながら,水面・水中での自然電位測定を実施し,各層で得られた水平方向の電位分布について比較を行い,水深などの測定環境の違いが電位分布に与える影響について検討を行った.