抄録
ナトリウムイオンや塩化物イオンは、陸水の基本的な溶存成分である。これらは人為的な影響をみるための指標ともなりうる物質である。陸水のNa/Cl比に関する研究は多くが降水中のNa/Cl 比に関するもののであり、河川水を扱ったものは菅原(1961)などがあるが数は多くない。河川水中のNa/Cl 比をみることは、流下に伴い河川水質が人為の影響を受けて変化していく過程を観察するのに適した方法であると言える。多摩川水系の浅川は比較的短い区間に山林から都市域までが分布する流域であり、流下に伴う河川水質の変化を観察するのに適した流域である。本研究は多摩川水系浅川をモデルフィールドとして流下に伴う河川水のNa/Cl 比の変化とそれに人間活動が与える影響を解明することを目的とする。