抄録
気候変動に伴い,積雪寒冷地では冷水性種の生息適地の縮小など,水温上昇による河川生態系への影響が懸念される.河川水温を左右する要因の一つに,地下水の流入の程度が挙げられる.Ishiyama et al. 1) は一般に地下水の流入が多いとされる日本の火山岩分布域で,夏期の平均水温が相対的に低く保たれることを報告し,過去の夏期水温と気象要素の関係をもとに,流域地質に応じた将来の河川水温を予測した.一方,流域地質に応じた河川水温を,プロセスベースのモデルで推定する手法はなかった.そこで著者らは熱収支及び流域水収支を考慮した,流域の地質の違いを反映した水温推定モデルを開発し,河川水温の将来変化を予測した2).本研究では既往研究2)より長期間を対象により多くの流域で河川流量と水温の再現及び水温の将来予測を行い,その特性を解析した.