順天堂医学
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原著
先天性股関節脱臼に於ける臼蓋底肥厚に関する研究
今野 秀夫
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1977 年 23 巻 2 号 p. 230-251

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抄録
先天性股関節脱臼は, 非観血的療法 (リーメンビュゲル) で, 高率に自動整復が得られているが, すべて整復され解決された訳ではない. 脱臼症例中で10-30%は自動整復が得られない. 著者はこの現状に鑑み, 治療前の単純X線写真から予後を予測する手掛りの一つとして, 臼蓋底肥厚に着目した. すなわち治療前のX線写真が計測に適するように, 正確に撮影されており, かつ治療後3年以上経過していて一応中間成績が判定できる症例159例を抽出して, 臼蓋底の厚さ, 臼蓋の深さ, 臼蓋の長さ, および脱臼度との関係を調べ, 臼蓋嘴・臼蓋・臼蓋底の三者を組み合せて臼蓋の形態的分類を試み, それらと治療成績の関係を明らかにした. その結果, 臼蓋底の厚さは脱臼側の臼蓋底が健側に比して厚くなる. 臼蓋底の実測値が3-4カ月, 6カ月群に於いて2mm以上, 12カ月群に於いて3mm以上の症例に観血的治療例が多い. 臼蓋の長さと臼蓋の厚さの関係では脱臼側は健側に比し臼蓋の長さの短縮と臼蓋底が厚くなり, その程度が著しいものが難治な傾向にある. また高度脱臼ほど臼蓋底肥厚が認められる. X線的臼蓋の形態では, 著者の分類による臼蓋底正常角凹型, 次いで臼蓋底正常角扁平型が経過が良いが, 臼蓋底肥厚丸凸型, 臼蓋底肥厚欠損凸型に難治なものが多い. 臼の浅いものが観血的整復例が多い. 臼蓋底肥厚に対処する方法の一つとして関節内へ突出した臼底を堀削することを案出し, 少数例ながらその方法で治療して骨頭の変形が予防できた症例を示し, なお堀削時に得た臼蓋底組織の病理的所見を検討した.
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© 1977 順天堂医学会
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