順天堂医学
Online ISSN : 2188-2134
Print ISSN : 0022-6769
ISSN-L : 0022-6769
原著
側頭葉癲癇患者のNasopharyngeal EEGによる検討
関 健井上 令一山口 昭平
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 27 巻 2 号 p. 172-182

詳細
抄録

鼻咽頭誘導法による脳波記録は40年にのぼる歴史をもつが, 現在のわが国では必ずしも普及した方法ではない. われわれはこの方法の有用性を認め1978年以来, 側頭葉てんかんの患者を中心に試みてきた. 44人の患者に頭皮上誘導とともに, 鼻咽頭誘導による56回の脳波記録を行った. 精神運動発作症状を示す患者では20例中11例, 55%に鼻咽頭誘導で棘波, 又は鋭波を認め, その中には, 頭皮上誘導では側頭部焦点を認めなかった1例があり, それを含めて7例が内側, 又はより内側側頭葉焦点を示すものであった. 前記棘波又は鋭波の検出は, 全例とも睡眠時下の記録であり, 鼻咽頭誘導に於いてもまた頭皮上誘導同様二, 睡眠賦活が必須である. 頭皮上誘導で14&6 positive burstsとして示されるdischargeは, 鼻咽頭誘導では14&6 negative burstsとしてとらえ得た. この波の病態生理学的な意義については, 未だ評価が定まっておらず, 今後の研究が俟たれる興味深い知見である. 徐波成分の検出については, 鼻咽頭誘導法はあまり有用でない. これは呼吸運動等によるartifactとの区別がし難いためであるが, しかし, tumor, abscessなどの例ではfocal slowとして明らかにし得た. 鼻咽頭誘導法の長所, 及び短所について他の報告者の知見と比較し考察した.

著者関連情報
© 1981 順天堂医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top