順天堂医学
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原著
硫酸多糖類Degraded carrageenanの発癌性に関する研究
若林 一雄
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1981 年 27 巻 2 号 p. 159-171

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抄録

Degraded carrageenanは紅藻由来の硫酸多糖類で, 経口投与により種々の実験動物の大腸に潰瘍性病変を発生させる事が知られていた物質である. 今回, degraded carrageenanの発癌性, 特に大腸に対する発癌性とその初期病変を, ラットを用いて検討した. 同時に, 変異原性, 試験管内発癌性についても検索し, 癌原性を多角的に検討した. 発癌実験では, Sprague-Dawley系ラットにdegraded carrageenanを飼料 (10, 5あるいは1%) ・飲料水 (5%), あるいはstomach tube (5あるいは1g/kg) で, 最大24カ月間与えた. その結果, 結腸直腸に先ず潰瘍性病変と扁平上皮化生が, 次いで扁平上皮癌, 腺癌, あるいは, 腺腫等の腫瘍が発生する事を見出した. 更に, 一部のラットには扁平上皮癌の所属リンパ節への転移も認められた. 大腸腫瘍発生率は10%飼料群で31.7%, 5%飼料群で20%であったが, 投与18カ月目以上の生存例では各々64.3%, および33.3%のより高い発生率を示した. また, 5%飲料水群, および5g/kg投与群における発生率は各々27.5%, および27.6%であった. 初期病変に関しては, 10% degraded carregeenan飼料を1日-12週間にわたって, SPrague-Dawley系ラットに与えて検索したが, 投与1日後には早くも肛門直腸境界部の大腸粘膜上皮に変性, あるいは表層性び爛, 2週間後には明瞭な出血性び爛・粘膜浮腫, および扁平上皮化生が出現する事を見い出した. 変異原性については, Ames法とV-79細胞により検討したが, いずれにおいてもdegradedcarrageenanに変異原性は認められず, V-79細胞に対する細胞毒性もなかった. また, ハムスター胎児細胞を用いた試験管内発癌試験でも結果は陰性で, 細胞毒性も認められなかった.

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© 1981 順天堂医学会
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