順天堂医学
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27 巻, 2 号
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目次
Contents
特集 宮崎・橋本両教授定年退職記念講演
原著
  • 石川 浩
    1981 年27 巻2 号 p. 133-146
    発行日: 1981/06/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    臨床上もっとも使用頻度の高い吸入麻酔薬であるハローセンは, 重大な副作用として, 時に致死的でさえある肝障害を惹き起すことがある一方, ハローセンを用いて実験動物に肝障害を起させようという試みはこれまで成功していない. 著者はラットを用いてハローセンを経口, および皮下の2種の経路からくり返し投与することにより, 約2週間で再現性があり, 且つヒトにおけるハローセン肝障害と, 病理組織学的に類似した肝障害を起し得た. すなわち肝小葉の中心帯で肝細胞が変性消失し, その周囲に強い好酸性を示す濃縮した変性, もしくは壊死に陥った肝細胞を散見し, それは小出血とリンパ球や組織球の浸潤をともなっていた. その他の肝細胞では, 一部粗大脂肪滴をともなう脂肪変性と, 僅かの核分裂の増加を認めた. また血清GOT活性は無処置群, およびオリーブ油のみ投与の対照群とくらべ有意に増加していた.
  • 水口 國雄
    1981 年27 巻2 号 p. 147-158
    発行日: 1981/06/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    手術材料を中心として, 髄膜腫200例の臨床病理学的分析を試みた. 腫瘍の発生部位・性比・手術時の年令など, 臨床的事項では従来の報告をほぼ裏づける結果を得た. 各組織型の出現頻度にも従来のものとの間に特別の差異は見られない. しかし, 髄膜由来の悪性腫瘍と呼べる例が194例中15例 (7.7%) であり, このうち狭義の悪性髄膜腫は10例 (5.2%) で, 他の報告に比べ高い頻度を示した. 次に4個の組織学的パラメーター (核分裂数・壊死・核異型・浸潤性) により, 腫瘍の異型度を点数で表現し, 最終的にGradeI-IVに分類した. Rubinsteinの方法による分類と, このGradingsystemとの一致率は96.3%であった. この分類を用いて腫瘍に対する再手術例の頻度を比較すると, GradeI 10.1, GradeII 21.1, GradeIII 33.3, GradeIV 75%と比較的良い相関を示した. パラメーター以外の組織成分の各Gradeにおける出現頻度を調べると, 砂粒腫体・黄色腫細胞・lipomyxomatous変化などは低いGradeで認められ, 一応良性指標と見なすことができる. これに対して硝子化や渦紋状配列は, 良性・悪性の指標になり得えない. GradeI 7例, GradeIII 1例, GradeIV 2例の計10例の電顕的検索を行った. GradeIとIIIの例で, 上皮様から線維芽細胞への移行を認めた. GradeIIIの例ではinterdigitationの減少や, 核のinvaginationの増加が見られるが, 基本的にはmeningothelとしての性質を保っている. GradeIVの一例はangioblasticな性格が示され, 他のGradeIVは全く未分化な細胞から成っていた.
  • 若林 一雄
    1981 年27 巻2 号 p. 159-171
    発行日: 1981/06/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    Degraded carrageenanは紅藻由来の硫酸多糖類で, 経口投与により種々の実験動物の大腸に潰瘍性病変を発生させる事が知られていた物質である. 今回, degraded carrageenanの発癌性, 特に大腸に対する発癌性とその初期病変を, ラットを用いて検討した. 同時に, 変異原性, 試験管内発癌性についても検索し, 癌原性を多角的に検討した. 発癌実験では, Sprague-Dawley系ラットにdegraded carrageenanを飼料 (10, 5あるいは1%) ・飲料水 (5%), あるいはstomach tube (5あるいは1g/kg) で, 最大24カ月間与えた. その結果, 結腸直腸に先ず潰瘍性病変と扁平上皮化生が, 次いで扁平上皮癌, 腺癌, あるいは, 腺腫等の腫瘍が発生する事を見出した. 更に, 一部のラットには扁平上皮癌の所属リンパ節への転移も認められた. 大腸腫瘍発生率は10%飼料群で31.7%, 5%飼料群で20%であったが, 投与18カ月目以上の生存例では各々64.3%, および33.3%のより高い発生率を示した. また, 5%飲料水群, および5g/kg投与群における発生率は各々27.5%, および27.6%であった. 初期病変に関しては, 10% degraded carregeenan飼料を1日-12週間にわたって, SPrague-Dawley系ラットに与えて検索したが, 投与1日後には早くも肛門直腸境界部の大腸粘膜上皮に変性, あるいは表層性び爛, 2週間後には明瞭な出血性び爛・粘膜浮腫, および扁平上皮化生が出現する事を見い出した. 変異原性については, Ames法とV-79細胞により検討したが, いずれにおいてもdegradedcarrageenanに変異原性は認められず, V-79細胞に対する細胞毒性もなかった. また, ハムスター胎児細胞を用いた試験管内発癌試験でも結果は陰性で, 細胞毒性も認められなかった.
  • 関 健, 井上 令一, 山口 昭平
    1981 年27 巻2 号 p. 172-182
    発行日: 1981/06/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    鼻咽頭誘導法による脳波記録は40年にのぼる歴史をもつが, 現在のわが国では必ずしも普及した方法ではない. われわれはこの方法の有用性を認め1978年以来, 側頭葉てんかんの患者を中心に試みてきた. 44人の患者に頭皮上誘導とともに, 鼻咽頭誘導による56回の脳波記録を行った. 精神運動発作症状を示す患者では20例中11例, 55%に鼻咽頭誘導で棘波, 又は鋭波を認め, その中には, 頭皮上誘導では側頭部焦点を認めなかった1例があり, それを含めて7例が内側, 又はより内側側頭葉焦点を示すものであった. 前記棘波又は鋭波の検出は, 全例とも睡眠時下の記録であり, 鼻咽頭誘導に於いてもまた頭皮上誘導同様二, 睡眠賦活が必須である. 頭皮上誘導で14&6 positive burstsとして示されるdischargeは, 鼻咽頭誘導では14&6 negative burstsとしてとらえ得た. この波の病態生理学的な意義については, 未だ評価が定まっておらず, 今後の研究が俟たれる興味深い知見である. 徐波成分の検出については, 鼻咽頭誘導法はあまり有用でない. これは呼吸運動等によるartifactとの区別がし難いためであるが, しかし, tumor, abscessなどの例ではfocal slowとして明らかにし得た. 鼻咽頭誘導法の長所, 及び短所について他の報告者の知見と比較し考察した.
紹介
  • --当科のPerinatal Laboratoryについて--
    古谷 博, 橋本 武次, 深間内 一孝, 渕脇 泰介
    1981 年27 巻2 号 p. 183-192
    発行日: 1981/06/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    人生の中で最も危険な時期であるといわれている周産期は, 母児共にしばしば不測の有害な合併症がおこり得る. それゆえ, 現代の進んだ方法で十分な看護と, 正確な監視が必要となる. 分娩室の直ぐ近くで, 患者の検査データが直ぐわかるように, よく整備されたperinatal laboratoryは, 周産期における最新の管理をするのに必要なものと考えられる. 病院と当科の協力によって, 我々のperinatal laboratoryでは, 次の如き検査が行えるようになり, その臨床的意義を以下に述べる. 1) 妊娠末期の胎児の健康状態を知るnon-stress test. 2) 胎児仮死を見つけるために分娩監視装置を用いる継続的胎児監視. 3), 妊娠末期と分娩中に潜在性胎児仮死を見つけるための羊水鏡検査. 4) 胎児予備能の大きさを知るための胎盤機能検査. 5) 新生児のための諸検査. 血液ガスと電解質の不均衡, 黄疸・低血糖・感染・染色体異常・先天性代謝異常など. 6) 母体に生命の危険をおこす循環器系の事故出血・産科ショックのための検査. 我々のperinatal laboratoryは, 特にハイリスク妊娠例にて, 母児の異常を早期にしかも正確にみつけ, 治療の成果を確認するのに役立っている.
抄録
てがみ
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編集後記
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