順天堂医学
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原著
膵癌の病理学的ならびに臨床的研究
炭田 正孝
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キーワード: 膵癌, 病理, 血管造影, 総合診断
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1983 年 29 巻 4 号 p. 532-549

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抄録

1972年から1982年6月までの10年6か月間に, 順天堂大学医学部消化器内科で診断した膵癌122例を検討した. また剖検63例, 切除21例, 計84例を用いて病理学的研究も行った. 腫瘍の大きさは最小1.2×1.0cmから最大9×11cmまでであった. 血管造影所見と病理所見を対比検討して, 膵癌に特異的な血管造影所見, 動脈のencasementと閉塞の成因を組織学的に明らかにした. 血管造影による癌の大きさの診断, 門脈浸潤, 膵被膜浸潤の診断能を検討した. 超音波検査 (US), コンピューター断層撮影 (CT), 内視鏡的膵胆管造影 (ERCP), 血管造影の膵癌診断能を調べた. 切除例, 非切除例共に各種検査法の診断能は86%から100%で, 差はなかった. 各種検査法の膵癌診断の信頼度を検討した. USは膵疾患のスクリーニング検査法として最適であるが, その所見が陽性にでた時の信頼度は低いので, CTかERCPを行わなくてはならない. 大きな膵癌はUSとCTだけで診断できる. 3cm以下の膵癌の診断にはERCP, 血管造影による組み合わせ診断が必要である. 血管造影は膵疾患の良悪性の鑑別診断, 小膵癌の確定診断, および切除可否の決定には不可欠な検査法である.

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© 1983 順天堂医学会
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