順天堂医学
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原著
虚血性心疾患および心筋疾患におよぼすアルコールの影響について
中島 大和
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1983 年 29 巻 4 号 p. 519-531

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抄録

順天堂大学における378例および越ケ谷市立病院での66例の急性心筋梗塞について, アルコール摂取との関係を知るために飲酒歴を中心に臨床的検討を行った. また, 当教室で経験した心筋疾患152例および心筋疾患剖検例64例について, アルコール飲用との関係を中心に検討した. 慢性アルコール症患者107例と, アルコール性肝障害患者53例についても臨床的検討を行い, 以下の結果を得た. (1) 本邦では近年アルコール消費量, 虚血性心疾患とも増多傾向にある. (2) 急性心筋梗塞は非飲酒者に多い傾向があるが, 最近では飲酒者の占める割合が増大しつつある. (3) アルコール摂取が虚血性心疾患のnegative risk factorである可能性は不明で, 非飲酒者では少量のアルコール摂取を, 飲酒者では大量のアルコール摂取を契機に急性心筋梗塞を発症した症例が10-13%存在した. (4) 慢性アルコール症・アルコール性肝障害患者では心電図異常, 心陰影の拡大が高率に認められた. (5) 慢性アルコール症患者における心臓超音波のMモードによる左心機能の検討では, 25例中3例に駆出率の低下, 4例に左室内周平均短縮速度の低下をみたが, これらはアルコール大量摂取と関係している可能性が示唆された. (6) 心筋疾患152例中大酒家は15例 (10%) であった. (7) アルコール性心疾患剖検例は6例で, 心重量の増大, 左心室の拡張性肥大, 組織学的には心筋の肥大・変性, 心筋内線維症が主たる所見であった.

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© 1983 順天堂医学会
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