順天堂医学
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29 巻, 4 号
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目次
Contents
特集 肝炎から肝癌まで
  • 浪久 利彦
    1983 年 29 巻 4 号 p. 455-456
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
  • 北見 啓之
    1983 年 29 巻 4 号 p. 457-463
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    各種肝疾患における生化学検査の意義は, 診断, 経過観察, 治癒あるいは予後の判定にあると考えられる. しかし, 肝疾患はそれぞれにおいて異なる病態をとることから, 選択されるべき生化学検査も異なってくる. すなはち, 急性肝炎では経過観察と治癒判定が重要であり, それにはトランスアミナーゼの測定が有用である. さらに劇症肝炎の早期診断には凝固因子の測定が, 慢性肝炎の炎症所見の把握にはトランスアミナーゼとγ-グロブリンの測定が, 肝硬変の予後の判定にはICG検査が有用であり, 広く行われている. 本稿では生化学検査を肝細胞からの逸脱酵素, 肝で生成される蛋白質, γ-グロブリン, 胆道系酵素, 色素排泄試験の5グループに分け, 各肝疾患におけるこれら生化学検査の特徴およびその発現機序を述べ, その意義について略述した.
  • 有山 襄, 白田 一誠, 島口 晴耕, 須山 正文, 小川 薫, 伊藤 正樹, 白壁 彦夫
    1983 年 29 巻 4 号 p. 464-470
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌の診断はhigh risk groupを超音波でスクリーニングして, 異常がみられる例に血管造影を施行する方法が能率的である. 1cm前後の小さな腫瘍も診断できる. 肝細胞癌の予後は切除例がもっともよい. 切除可能例を診断することが最良の治療法である. 切除可否の決定には形態学的および機能的両方からの検討が必要である. 切除不能例には動脈塞栓術が有効である. 塞栓術の適応がない症例には抗癌剤動注療法を行う.
  • 田中 卓雄, 平野 暁
    1983 年 29 巻 4 号 p. 471-490
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    最近の画像診断の進歩には目をみはるものがある. CT, 超音波, RIなど, いずれも患者に対する侵襲が少なく種々の肝疾患に対しても広く用いられている. しかしこれらの各modalityの間にはそれぞれ長所, 短所があり, いたずらに各modalityを駆使すれば良いという訳ではない. 臨床家はminimal examination, maximum informationsを心がけるべきである. 本稿ではこれらの点をふまえて特に肝疾患におけるCTとRIの画像診断の概要を述べるとともに, 症例を呈示しておのおのの診断能についても言及した.
  • --非B型慢性肝疾患の病理学的研究を中心として--
    松本 俊治, 福田 芳郎
    1983 年 29 巻 4 号 p. 491-498
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    慢性肝疾患について, 外科的生検材料と剖検材料を用いて病理学的に検討した結果, 次の所見が得られた. (1). 非B型輸血後肝炎はB型肝炎に比べて, 病変が軽度であり, 肝線維症になり易い傾向を示した. (2). 肝細胞癌の転移率は肉眼的には塊状型で高く, 組織学的には低分化型肝細胞癌群の全ての症例に, 広範囲に転移が見られた.
  • 黒田 博之
    1983 年 29 巻 4 号 p. 499-505
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    肝炎・肝硬変に対する治療は, 原因と病態によって多くの方法が開発実施されている. 劇症肝炎に対しては, プレドニゾロン大量投与, 血漿交換, グルカゴン・インシュリン療法を主とし・ヘパリン, アミノ酸混合液などを併用し, 救命率の向上を認めている. アルコール, 薬剤, 過栄養による脂肪肝の治療法は, その原因を除去することが基本である. B型肝炎ウイルスに対しては, 感染と発症の防止にワクチンとHBs抗体を高力価に含む免疫グロブリンが, 抗ウイルス療法としてはインターフェロン, Ara A, OK 432, トランスファーファクター, シアニダノール, レバミゾールが, またseroconversionにはrebound現象を利用した副腎皮質ホルモンや強力ネオミノファーゲンC (SNMC) の離脱療法が試みられている. 慢性肝炎の炎症抑制のためには, プレドニソロンとアザチオプリンが投与され, 特にHBs抗原陰性慢性肝炎には効果を認めている. ルポイド肝炎にはプレドニソロンが, 原発性胆汁性肝硬変症はDペニシラミンが使用されている. 肝硬変の腹水に対しては, 利尿剤あるいは, 腹水の血中再注入が行われている. 肝臓病に対する治療はないといわれた時代は遠い昔のことであって, 肝臓病治療学は新しい局面を迎えている.
  • 児島 邦明, 奥山 耕一, 二川 俊二, 八木 義弘, 杉浦 光雄, 吉峰 二夫, 桑原 紀之
    1983 年 29 巻 4 号 p. 506-516
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    肝硬変合併肝癌に対する肝切除は, しばしば, 術中大量出血を招くことがある. われわれは1980年より, 肝門部にて肝十二指腸靱帯を, Fegarty 鉗子にて圧迫し, 常温下肝流入血行遮断を行い, 術中出血量の減少と手術時間の短縮を可能とし, 良好な成績をおさめている. 肝流入血行遮断によるSplanchnic poolingと肝 anoxiaに対しても, 5分間遮断と5分間開放を繰り返すわれわれの方法では, 術後肝機能に及ぼす影響は認められず, 病理組織学的にも遮断前後で変化を認めなかった. 最長総遮断時間は21分9秒であり, 平均術中出血量は1,610mlであった. 本法を応用することにより, 今後, ますます増加するであろう硬変合併肝癌に対して, 積極的な肝切除が行われることを期待している.
  • 杉浦 光雄
    1983 年 29 巻 4 号 p. 517-518
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    第226回順天堂医学会学術集会が昭和58年9月22日午後4時から午後6時30分まで開催された.“肝炎から肝癌まで”というビッグタイトルで, 順天堂大学消化器内科, 放射線科, 第一病理, 第二外科のそれぞれの専門家によって発表された. 肝炎, 肝硬変, 原発性肝細胞癌の病理, 診断, 治療について発表された概要をまとめる. これら一連の疾患群の基礎および臨床面の進歩は近年とくに著明であり, 1-2年の間をおいた学会報告の内容, 傾向にかなりの変化がみられる程である. 治療に関する進歩はさらに激しく, とにかく毎年専門家の報告をきき, あるいは論文に目を通さなければ, あっという間においていかれる. 各専門家の発表を簡略にまとめ多少の意見を加える.
原著
  • 中島 大和
    1983 年 29 巻 4 号 p. 519-531
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    順天堂大学における378例および越ケ谷市立病院での66例の急性心筋梗塞について, アルコール摂取との関係を知るために飲酒歴を中心に臨床的検討を行った. また, 当教室で経験した心筋疾患152例および心筋疾患剖検例64例について, アルコール飲用との関係を中心に検討した. 慢性アルコール症患者107例と, アルコール性肝障害患者53例についても臨床的検討を行い, 以下の結果を得た. (1) 本邦では近年アルコール消費量, 虚血性心疾患とも増多傾向にある. (2) 急性心筋梗塞は非飲酒者に多い傾向があるが, 最近では飲酒者の占める割合が増大しつつある. (3) アルコール摂取が虚血性心疾患のnegative risk factorである可能性は不明で, 非飲酒者では少量のアルコール摂取を, 飲酒者では大量のアルコール摂取を契機に急性心筋梗塞を発症した症例が10-13%存在した. (4) 慢性アルコール症・アルコール性肝障害患者では心電図異常, 心陰影の拡大が高率に認められた. (5) 慢性アルコール症患者における心臓超音波のMモードによる左心機能の検討では, 25例中3例に駆出率の低下, 4例に左室内周平均短縮速度の低下をみたが, これらはアルコール大量摂取と関係している可能性が示唆された. (6) 心筋疾患152例中大酒家は15例 (10%) であった. (7) アルコール性心疾患剖検例は6例で, 心重量の増大, 左心室の拡張性肥大, 組織学的には心筋の肥大・変性, 心筋内線維症が主たる所見であった.
  • 炭田 正孝
    1983 年 29 巻 4 号 p. 532-549
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    1972年から1982年6月までの10年6か月間に, 順天堂大学医学部消化器内科で診断した膵癌122例を検討した. また剖検63例, 切除21例, 計84例を用いて病理学的研究も行った. 腫瘍の大きさは最小1.2×1.0cmから最大9×11cmまでであった. 血管造影所見と病理所見を対比検討して, 膵癌に特異的な血管造影所見, 動脈のencasementと閉塞の成因を組織学的に明らかにした. 血管造影による癌の大きさの診断, 門脈浸潤, 膵被膜浸潤の診断能を検討した. 超音波検査 (US), コンピューター断層撮影 (CT), 内視鏡的膵胆管造影 (ERCP), 血管造影の膵癌診断能を調べた. 切除例, 非切除例共に各種検査法の診断能は86%から100%で, 差はなかった. 各種検査法の膵癌診断の信頼度を検討した. USは膵疾患のスクリーニング検査法として最適であるが, その所見が陽性にでた時の信頼度は低いので, CTかERCPを行わなくてはならない. 大きな膵癌はUSとCTだけで診断できる. 3cm以下の膵癌の診断にはERCP, 血管造影による組み合わせ診断が必要である. 血管造影は膵疾患の良悪性の鑑別診断, 小膵癌の確定診断, および切除可否の決定には不可欠な検査法である.
  • 小沼 一郎
    1983 年 29 巻 4 号 p. 550-560
    発行日: 1983/12/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    線維化を伴う慢性膵炎の膵島変化について, 病理組織学的, 免疫組織化学的および組織計測法的に検討した. その結果, 慢性膵炎の膵島は対照とした非膵炎例にくらべ, 大きさにばらつきがあり, 特に線維化巣内では不規則, 奇異な形状を呈するものが多く, 膵管から膵島への移行を思わせるductulo-insular proliferationも多数認められた. これらの膵島について免疫組織化学的にinsulin (B), glucagon (A), somatostatin (D), pancreatic polypeptide (PP) 産生細胞の膵島内構成比率を調べると, 慢性膵炎例の実質内膵島では対照例にくらべB細胞の減少とA, D, PP細胞の相対的増加を認めた. 一方, 慢性膵炎の線維化巣内には免疫組織化学的に2種類の膵島が認められた. 1つは膵島構成細胞数が多く, 実質内のものと同傾向を示す膵島であり, 他方は, 再生性のものと思われる小型のほとんどがB細胞によって占められる奇異な形状を示す膵島であった. 以上の所見から, 慢性膵炎においては膵の外分泌系のみならず, 内分泌系にも変化, 特に膵島構成細胞の構成比率に変化のおこること, また, 主としてB細胞の再生が起こってくることが強く示唆された.
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