順天堂医学
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原著
ヒト胎盤の鉄通過機序に関する研究
多和田 哲雄
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1986 年 32 巻 2 号 p. 167-179

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抄録
経胎盤鉄輸送機構の一端を解明するため, 鉄輸送蛋白であるtransferrin (Tr) に注目し, そのヒト胎盤絨毛組織における, 局在・動態について検討し, 以下の結果を得た. 酵素抗体法によりsyncytiotrophoblast (S細胞) 細胞膜表面全体にTrの局在が認められた. また, in vitroにおいて, S細胞表面からthiocyanateによりTrを遊離させた後, 母体血清添加によるTrの細胞表面への再結合を認め, S細胞へのTrの結合が可逆的かつ特異的であることが認められた. in vitroにおける絨毛組織の放射性鉄取込みのautoradiographyによる観察において, 組織は [59Fe] diferric Trから, 効率よく放射性鉄を取込み, 取込まれた鉄は絨毛上皮細胞基底膜付近にhemosiderinの形で集積することが認められた. 単層培養S細胞によるTr取込みの, 金colloidを用いた観察において, S細胞表面に結合したTrは, Tr receptorを介したendocytosis, すなわちreceptor mediated endocytosisによりS細胞質内へ取込まれ, coated vesicle, endosomeを経て, 最終的にIysosomeに入り処理されることが認められた.
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© 1986 順天堂医学会
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