順天堂医学
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原著
胆管上皮細胞の細胞形態学的研究
--特にブラッシング細胞診における胆道良性異型細胞と癌細胞の相違について--
桜井 秀樹
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1987 年 33 巻 2 号 p. 206-218

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抄録
胆道癌の細胞診診断成績の向上を目指して新鮮で豊富な細胞の得られる, PTCDからのブラッシング細胞採取法を用いて, 正常細胞・良性異型細胞・癌細胞について詳細な細胞学的検討と, 細胞異型度の数量化を行い各検査項目間の優位性を検討した. (1) 細胞群所見: 胆道癌は高度の細胞, 核の重積性, 高度の大小不同性がみられた. 一方, 良性異型細胞は正常細胞に比べて明かに重積性・大小不同性を認めたが, 癌細胞に比べその程度は低かった. (2) 細胞および核の面積: 癌細胞・良性異型細胞ともに大型で, 両者に有意の差はみられなかったが, 良性異型細胞には癌細胞にみられた各々核360 (1221μ2), 細胞850 (2882μ2) を超えるものはなかった. (3) 核縁: 癌細胞・良性異型細胞ともに肥厚するが, 癌細胞では不均等な高度肥厚が目立ち, 良性異型細胞では不均等な軽度肥厚が多かった. (4) クロマチン: 癌細胞・良性異型細胞ともにクロマチンは増量していたが, 良性異型細胞は均等分布を示しており, 癌細胞にみられた不均等分布はほとんど認められなかった. (5) 核小体の大きさおよび数: 大きさは正常細胞・良性異型細胞ともに小さく, 癌細胞にみられた最大長径4 (4, 16μ) 以上のものはなかった. 癌細胞・良性異型細胞ともにその数に有意性は認めなかった. 各項目における癌細胞と良性異型細胞との異型度の差を数量化し, 各項目間の優位性をみると, 1) 核小体の大きさ, 2) 細胞, 核の重積性, 3) クロマチンの分布および性状, 4) 核縁の肥厚に違いがみられた. 以上の項目を重要視し, 個々の細胞所見を捉えることで診断をより確実にするものと思われた.
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© 1987 順天堂医学会
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