順天堂医学
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原著
精神分裂病の臨床経過と事象関連電位
文元 秀雄
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1992 年 38 巻 3 号 p. 380-392

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抄録

DSMIIIRに従って診断された精神分裂病 (以下分裂病) 患者10名について, BPRS, SANS等で臨床症状を詳細に評価しながら, odd-ball課題での事象関連電位 (Event-Related Potentials: ERP) を向精神薬未服薬の時点から記録し, 臨床経過とN100成分, P300成分の変化について縦断的に検討した. 緊張型と妄想型の各2名は, 症状の軽快とともにP300振幅が増大する傾向が認められたが, 解体型と残遺型の計6名では, P300振幅の変動は症状の変化と一定の関係を持たず, 概して低振幅であった. また, 社会適応度の中間群ないし不良群では, 社会適応良好群に比べ, 非目標刺激時のERPにおいてP300成分が高頻度で出現した. また最も適応の悪い群では, 目標・非目標の両刺激ともにP300成分は認められなかった. 分裂病の認知障害において, 緊張型と妄想型では治療反応性が高いが, 解体型と残遺型には治療抵抗性の要素があり, 病態が前2者と異なると考えられた. そして非目標刺激時のP300の検討から, 認知構造の解体度が社会適応状況に影響する可能性が示唆された.

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© 1992 順天堂医学会
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