順天堂医学
Online ISSN : 2188-2134
Print ISSN : 0022-6769
ISSN-L : 0022-6769
原著
子宮頸部異形成病変におけるヒトパピローマウイルス感染の経過観察成績
長谷川 進宇津野 博石 和久
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 38 巻 3 号 p. 393-400

詳細
抄録

子宮頸癌において, その発癌過程にHuman Papilloma Virus;HPVが密接に関連していることが近年注目されている. 今回, 339例の子宮頸部におけるHPV検索により, HPV DNAが検出された48例 (14.2%) のうち異形成を認め, しかも一年以上の長期にわたり経過を観察し得た16例について, HPV type・その消長, さらに細胞診・コルポスコープ診・組織診における所見の推移を検討した. HPV DNAの検出はSouthern blot (SBH) 法・Dotb lot (Vira pap, Vira type) 法・in situ hybridization (ISH) 法によった. Low risk groupであるタイプ6 11はほとんどが慢性頸管炎あるいはCIN (cervical intraepitherial neoplasma) から検出され, 経過観察しえたCIN6例中persistance 2例・regression 2例で, progressionは認められなかった. high riskあるいはintermediate risk groupであるタイプ16 18 31 33 35は, 良性から悪性まで病変の程度と無関係に検出され, 経過観察しえたhigh risk groupであるタイプ16 18検出例のうち, 経過を観察しえた7例ではpersistance4例・regression 1例・progression 2例であり, progressionの2例はいずれも扁平上皮癌に移行した. intermediate groupであるタイプ31 33 35検出例のうち, 経過を観察し得た3例ではregression 2例・progression 1例であった. HPVのみが子宮頸癌発症の要因とは考えにくいが, 今回の経過観察成績からタイプ16 18は発癌と密接に関連していることが明らかにされた.

著者関連情報
© 1992 順天堂医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top