1992 年 38 巻 3 号 p. 401-406
現在, わが国ではヒトが食品として摂るもので直接アフラトキシン (AF) 中毒を起こすことはまず考えられないが, AF産生菌株が存在する限り, 家畜の飼料などが汚染される可能性が残っている. 食物連鎖の観点から特に生もの指向の昨今, ゆるがせに出来ない問題と思われる. そこで家兎を用い, AFを経口的に投与した場合と, AF産生株により感染を起こした場合とに分けて, それぞれAFの体内組織への移行・蓄積について検討した. その結果, いずれの場合も家兎の組織抽出物からAFは検出されなかったが, アスペルギルスの代謝産物の一つであるkojic acid (KA) に近似の物質が検出され, またin vitroでKAを産生する株が数種認められた. 今後, こうした真菌の代謝産物にも着目して行く必要があると考えられた.