1994 年 40 巻 1 号 p. 52-60
骨新生が行われる微小環境下でのlipopolysaccharide (LPS) とヘパリンの骨吸収促進効果は, まず破骨細胞に隣接する骨芽細胞や骨髄の単核細胞からのサイトカイン産生を促し, この分泌されたサイトカインが直接的に破骨細胞の骨吸収活性を刺激することを, 雛鶏の骨髄からの分離破骨細胞を用いて検討した. LPS (5μg/ml) は, 血清成分非添加培養下で効果を示し, その作用はシクロスポリンA (0.1μg/ml) で抑制され, インドメサシン (10-5M) では変化がなかった. ヘパリンは血清成分の有無にかかわらず破骨細胞の骨吸収活性を促進し, シクロスポリンA (0.1μg/ml) で抑制され, インドメサシン (10-5M) でも抑制される傾向がみられた. サイトカインの各種抗体を使用したところ, LPSおよびヘパリンの効果は抗TNF-α抗体で有意に抑制された. あらかじめLPSで処理した骨芽様細胞株であるbone marrow-derived stromal cell (ST2) やclonal osteogenic cell (MC3T3-E1) と破骨細胞をco-cultureすると, 破骨細胞をLPSで直接刺激したのと同様に骨吸収は促進され, この効果は抗TNF-α抗体で抑制された. 以上の結果より, LPSおよびヘパリンの破骨細胞への効果は, 骨芽様細胞や骨髄の単核細胞から産生されたサイトカインの1つであるTNF-αの分泌促進を介するものであることが示された.