順天堂医学
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原著
黄体化ホルモン放出ホルモン (LHRH) 産生ニューロンの起源について
I.ヒト胎芽におけるLHRHニューロン発生と移動
阿久津 聡
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1994 年 40 巻 1 号 p. 71-77

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抄録

近年, 黄体化ホルモン放出ホルモン (LHRH) 産生ニューロンは, 鼻の原基に由来し発生の進行と共に脳内に移動するという仮説が出されたが, ヒトの初期発生に関する報告はない. そこで人工妊娠中絶術により得られたヒトの胎芽を用いて, 免疫組織化学的にLHRH産生ニューロンの発生を調べた. 頭臀長14mmのステージでは, 鼻の部分にも脳内にもLHRH陽性ニューロンは認められない. 19mmになると, 嗅上皮とそこから出て脳に向かう嗅神経・終神経束に沿ってLHRH陽性ニューロンが移動しているのが認められ, 一部は脳内に入りこんでいた. さらに発生が進んで23mmのステージでは, 脳内のLHRH陽性ニューロンの数は増加し前部視床下部に達していたが, 嗅上皮のものは減少してほとんど見られなくなっていた. また, LHRH陽性ニューロンは胎仔型神経細胞接着因子 (NCAM-H) を強く発現していた. 以上より, ヒトにおいてもLHRH産生ニューロンは嗅上皮に由来し, 発生の進行と共に脳内に移動する可能性が強く示唆された. またニューロンの移動にNCAM-Hが関与していることが考えられた.

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© 1994 順天堂医学会
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