順天堂医学
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原著
自己抗体産生B細胞のFas発現とアポトーシス感受性
梁 広石姜 奕浜野 慶朋鶴井 博理橋本 博史広瀬 幸子
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1997 年 43 巻 2 号 p. 293-303

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抄録

T細胞やB細胞の過剰免疫反応の抑制や免疫寛容の維持にFas-Fasligand (FasL) を介した活性化細胞のアポトーシス死機構が重要な役割を担っているが, 自己免疫疾患における自己抗体産生B細胞の発生にFas-FasL系の異常が関与しているか否かは明らかでない. この点を明らかにする目的で, われわれはSLEモデル系であるNZB×NZW (NZB/W) F1マウスを用いて, B細胞におけるFas発現と自己抗体産生との関係を解析した. 未刺激の正常Balb/cマウスおよび2ヵ月齢NZB/W F1マウスの脾臓および腹腔B細胞には, B1およびB2細胞ともにFas発現細胞はほとんど見られなかった. 一方, これらの細胞を抗CD40モノクローナル抗体 (mAb) ・LPS・抗IgM抗体で刺激すると, 抗CD40mAbによってのみ強いFas発現の増強が見られた. この際, B2細胞は全てがFas高発現を示したのに対して, B1細胞は低発現と高発現の2群に分けられた. これらの細胞に抗Fas mAbを添加すると, Fas高発現B1およびB2細胞はアポトーシス死を起こしたが, Fas低発現B1細胞はアポトーシス抵抗性であった. 既に疾患を発症した加齢NZB/W F1マウスの脾臓には, 低レベルのFasを自然発現したB細胞の出現が見られ, これらの細胞はアポトーシス抵抗性であった. これらの結果から, B細胞におけるアポトーシス死はFasの発現レベルに依存した現象であることが明らかとなった. また, 抗CD40mAb刺激後のFas低発現B1細胞の形質は, 加える抗体濃度や反応期間を増しても変化しなかったので, B1細胞には今まで知られていなかつたFas発現レベルで区別される2つの亜集団が存在することが示唆された. 抗DNA抗体産生との関係を調べたところ, 抗DNA抗体はそのほとんどがFas低発現B細胞から産生された. 得られた結果から, B1細胞におけるFas発現レベルを規定している機構の解明を通し, 自己免疫疾患におけるB細胞免疫寛容の破綻の機序が明らかになるものと考えられた.

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© 1997 順天堂医学会
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