順天堂医学
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原著
ループス腎炎感受性遺伝子群の解析
--SLEモデル (NZW×BXSB) F1マウスにおける性差--
小寺 三喜伊田 昌功濱野 慶朋富野 康日己広瀬 幸子
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1998 年 44 巻 2 号 p. 152-166

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抄録
全身性エリテマトーデス (SLE) に伴うループス腎炎は多遺伝子支配の病態であり, 複数の感受性遺伝子群の遺伝子間相互作用に由来している. また, ループス腎炎の多彩な病態形質は同じループス腎炎の発症にも異なる感受性遺伝子群が関与している可能性をも示唆している. しかしながら, 個々の感受性遺伝子の同定はいまだ成されていないのが現状である. SLE自然発症系である (NZW×BXSB) F1マウスは, 他のモデルと異なり抗リン脂質抗体症候群を合併するユニークなモデルである. ループス腎炎は雌雄両者に発症するが, 雄に早期に, 且つ高度に発症する. これはBXSBマウスのY染色体上に存在する変異遺伝子Yaa (Y-chromosome-linked autoimmune acceleration) の効果によることが知られている. 今回われわれは, Yaa以外の感受性遺伝子の存在を明らかにすべく, マイクロサテライトDNA多型ならびに最近開発された量的形質解析法を利用して, NZW× (NZW×BXSB) F1退交配マウスを用いたループス腎炎感受性遺伝子のマッピングを行い, 以下に示す発見をした. 1) Yaa陽性雄マウスの解析で, 各々第7染色体テロメア側・第14染色体セントロメア側および第17染色体のH-2領域に不完全優性効果を示す3個の相加遺伝子を発見した. これら遺伝子は, Yaaの変更作用のもと各々独立して作用し, 相加的に重篤なループス腎炎を誘発していると考えられた. 2) 雌マウスの解析では, 雄で示された第7および第14染色体上の2つの感受性遺伝子の効果はいずれも認められず, かわりに, 第17染色体上のH-2連鎖遺伝子が極めて強く腎炎の発症を規定していることが明らかとなった. このH-2連鎖遺伝子の効果は, 第7染色体セントロメア側に存在する一個の変更遺伝子によって増強され, 腎炎の発症が誘発されていると考えられた. 3) このようなループス腎炎遺伝様式の雌雄差は, Yaa遺伝子のepistaticな遺伝子変更作用に由来するもので, Yaa遺伝子の同定に重要な示唆が得られた. 今回マップされたループス腎炎感受性遺伝子座近傍にはいくつかの候補遺伝子が存在しており, これらの遺伝子の本体の解明は, Yaa遺伝子の重篤な腎炎誘発効果の解明とともに, 将来のループス腎炎発症機構の研究に重要な情報をもたらすものと考えられる.
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© 1998 順天堂医学会
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